-White Snow-
□4.追憶と忘却。
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―――某研究室。
外装は2年前とあまり変わらないものの、中は荒れたまま。
流石に死体の処理だけはしてあるせいか異臭はそこまで酷くない。
噂が本当であるなら、ましろはここにいる。
三人は手分けして再び建物内をくまなく探すことにした。
「……白どころか、黒ばかりで嫌になりますね…。」
電気が通っていないせいで視界も悪い。
やはり当時のように、彼女のいた痕跡は一つも見つからない。
骸が諦めようかと合流地点へ踵を返した瞬間…
………♪
……………♪
聞き覚えのある声がした。
すぐさま振り返って暗闇に目を凝らすが姿は見えない。
「ましろ…?」
自分の中で一気に確信へと変わったのがわかった。
ましろはいる。
骸は早足で声の方へ向かう。
透き通るような声音が徐々に大きくなるにつれて期待も膨らんだ。
彼女を見つけて、連れて帰って何があるわけでもない。
けれども自分の中の何かが救われるような気がして。
声を頼りに進んだ先には大きな扉が一つ。
ゆっくり開ければ、唯一荒れていない綺麗な室内に少女の小さな背中。
白銀の髪と白いワンピース姿は全く変わっていない。
「……むくろ?」
懐かしい、幼いはっきりとしない呼び方。
自分をそう呼ぶのは間違いなく彼女だけ。
「会いに…来て、くれたんだ…。」
振り向いて、儚げに笑っていた。
僕たちが来ることがわかっていたように。
「会いに来たわけではありません。迎えに来たんですよ、ましろ。」
「迎えに…?」
「ここは君に似合いません。僕たちと行きましょう?」
否定はさせない。
させるつもりなど、更々ない。
どんな理由をつけてでも
貴女だけは…
「……ごめんなさい。」
「何を謝るんですか?」
「私、行けない。行きたいけど…まだ……」
「僕を断る正当な理由がある、とでも言いたいんですか?」
彼女は少し俯いて、それから僕の手を引いて部屋の更に奥へと進んだ。
言葉で説明するよりも解りやすい、実に優しくて残酷な誘導。
何も言えなかった。
怒りと憎しみでおかしくなりそうな感覚を必死に抑え込むために。
...