-White Snow-

□1.プロローグ
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――――始まりはいつも、雪の中。






一面の白と青。






私は――…ましろ。






はっきりと覚えているのはそれだけで、他のことはよく覚えてない。



時々頭に浮かぶのは、とても悲しい誰かの顔。



今だってね、こうして目を瞑れば…













―――…ね…



……?



――…ねぇ…



誰かの…声が、する。



ましろは閉じていた目をゆっくり開いた。

相変わらずの真っ白な世界に、変わったことが一つだけ。

自分の顔を心配そうに見つめる一人の少年。

ススキ色の髪と茶色の瞳。





「……きみ…大丈夫…?」

「…なに、が…?」




ましろはきょとんとして思わず聞き返してしまった。

特に誰かに心配をされるようなことをした覚えもないから。

ただ、質問に質問を返された目の前の少年…ましろよりは年上な彼は、困ったように笑った。

「えと…こんなに雪が降ってるのに、傘…さしてないし…」

寒くないの?と少年はぎこちなく言う。

そのことにましろは軽く首を傾げて口を開く。

「平気だよ。お兄ちゃんは?」

「え…オレ…?オレは、少し寒いかな。」

「じゃあ、ましろが温めてあげる!」

ましろは少年の頬を自らの小さな手で包み、にっこりと笑む。

予想外のことに少年は一瞬だけ戸惑ったものの、淡く微笑んで小さく感謝した。

「ありがとう。君は…ましろって、いうの?」

「うん、多分。いつもね、ましろは雪の中にいるから。」

「いつも…?」

「お兄ちゃんのお名前は?」

「あ、オレは綱吉。沢田綱吉っていうんだ。」

「つなよし…。かっこいいお名前だね!」

ましろは嬉しそうに笑って雪道をピョンピョン飛び跳ねた。

綱吉もその様子を見て少しだけ安堵の息を漏らす。

日曜日で天気も雪となると、普段よりも更に人通りが無い。

そんな道の真ん中で一人、傘もささず白のワンピースと超薄着の格好で少女が佇んでいたのだ。

誰だって心配して声を掛けるはず…。

「あれ…でも…」

そこで綱吉には不思議に思うことがあった。



雪道にはましろと自分の足跡以外、一つもついていないこと。



...
 

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