幻実のかくれんぼ置き場

□耳と尻尾と森林と
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森林家ーーそれは幻想と幻覚の家系で、現在の半妖の家系の中では有名である。森林というのは当て字であり、本来は深林というのが正しく、その意味は狐が深い林に迷い込む幻覚を魅せると、書物には書き込まれている。
そして、森林水面の半妖は、狐である。



水面は一人の部屋で深呼吸をした。先ほど外出する道を見送ったのを思い出して、現在約30分経ったのを確認してから、再び深呼吸をした。今日は夕方まで水面一人の寮室なのだ。

「ーー『夢月』」

静かな声でそう呟くと、ぽんっと音が立つように黄金色の耳と尻尾が現れた。
耳と尻尾はふるふると数回震わすと、緊張を解くようにふぅと一息ついた。

『夢月』というのは水面の使う術の名前である。幻想、幻覚を操る森林家では基本の術である。
水面はこれで耳と尻尾を普段は隠していた。

「なんか久々に解いたなぁ。肩の力、抜ける…。」

そのまま布団に横たわると、揺れる尻尾が首筋をかすめる。くすぐったい、と胎児のような格好をすると、携帯で白狼と優に連絡を入れた。
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