幻実のかくれんぼ置き場

□初めての不真面目
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寮生活の初日は、水面にとっては嬉しくも感情がぐるぐると回り、荷物の運び出しもあり忙しい日となった。
そのせいか否か、現在の時刻は7時半。水面は温い布団の中寝息を立てていた。

「……ん、…んり……森林、起きろ。森林。」

ゆさゆさと道が水面の肩を揺らす。水面は唸り声を出してからもぞもぞとして布団を顔までかける。
道がこんなにまで水面を起こしにかかるのには理由があるのだ。
寮生活を行う上での注意の中に、遅刻の場合同室の人と連帯責任というものがあり、そのためだった。
門が閉まるのは8時15分。起こしているうちにもう10分は経ってしまったであろうギリギリすぎる時間に、道は悩ましげにしながらひたすら肩を揺することしか出来なかった。

水面が目を覚ましたのはそれから20分後の8時だった。

水面は目を覚ますと飛び起きて急いで準備を始めていた。それを見ていた道は腕時計を見ると忙しく動く水面を呼んだ。

「森林、」
「すみません!もうちょっとなので、本当にごめんなさい!!」
「…サボろう。」
「へ…?」

何を言っているかわからないという顔をして、水面は力の抜けた声を出した。そして少しばかりの間を開けると慌てて水面は言った。

「だ、ダメですよ!そんな、先輩今が一番大切ですし…。」
「成績なら別に問題はない。それに、寝坊した罰って事で、な?」
「にしても…ダメですよ…。」

しゅんとしながら水面が言うが道は曲げようとはせず、むしろ頭をぽんと握った手で叩くと人差し指を口元に当てて言った。

「サボりなんて今しかできないし、同室の交流でも深める名目にはいい機会だから。」

そう言った道はふっと微笑んだように水面には見えて、それ以上何も言えなくなってしまった。
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