それ楽しい?

□ときめきたい話
1ページ/1ページ




『……女性は。』

『女性はどんなことをされたらドキドキするんだろうか。』


いつもの放課後、私が留三郎と伊作の部屋に遊びに来ていた時のことである。
突然の私のそんなため息混じりに発した言葉に、同級生の二人の目が点になる。
まさに彼らの目は点だったし、みるみる顔が青ざめていったし。


『……なに、二人して。』
「ど、どうした、いきなり。」
「お、女の子が喜ぶようなことを知ってどうするんだい?」


二人が気持ち悪がっているのか驚いているのか気持ち悪がっているのか焦っているのか気持ち悪がっているのかとにかくいつもと違った様子で私の方を見る。
多分これは私のことを凄く気持ち悪いと思っているやつだ。
何だよこれ。


『どうするって別に……。
ほら、私だっていずれは女性と恋仲になって逢引きをすることがあるかもしれないだろ?
そうなった時に必要かと思って。』
「なんだ、そんなことか……。
どうだろうな。」
『うるせぇあるよ!!!!!』
「じゃあいつになるかわからないけどとりあえす必要になる知識が欲しいって訳だね、今じゃなくて。」
『そうだけど。
そうなんだけどいつになるかわからないって言い方キツいな。』


二人とも私がこの先女の子と結ばれないとでも思っているんだろうか、なんて失礼な。
たしかに今は女の子の前では緊張してしまってうまく話せなかったり睨んじゃったりするけども。
いずれは克服してモテる予定だ、この容姿だしモテないはずがない。
これでモテないなら正直私以外の人たちはより絶望的にモテないはずである。
そう言うと留三郎が私を鼻で笑った。


「やめとけやめとけ。
まずこれから先必要にはならないだろうな。
それにどう頑張ったって男の俺達にそんな女子がときめく事、なんて理解できるわけ無いだろ。」
「たしかに、私達が考えている事よりずっと複雑だろうね。」


無理無理と言ったふうに顔の前で手を振る留三郎。
そしてあはは、と苦笑いを浮かべる伊作。

甘い。
君たち甘すぎるぞ。
私が週末に通っている甘味屋のお汁粉くらい甘いぞ。
少しお汁粉食べたくなってきた。


『……ふふふ。』
「なんだ気色悪い。」
「たしかに。」
『うるさいそこはスルーして!!!!!
……違うんだよ。
理解できないと決めつけていてはいけないんだよ全然駄目なんだよ食満駄目三郎なんだよ……。』
「……。」
『……食満駄目三郎ぉ。』
「うるせぇ2回も言うなつまらないしモテないくせに上から目線凄まじいな。」
『やめろモテないとか言うな自覚あるから!!!!!
……私達自ら体験してみないと女子の気持ちって……わからないんじゃない?』
「……それってつまり。」


自分がドキドキさせられてみるって事?、と随分とわかりにくい表現を伊作はしたが、まぁそういう事である。
女子がされてドキドキすると思われることを自分で体験して検証してみよう、という話で。
実際、あれはどうだこれのほうがいいだろうと色々悩むよりも自分達で体験してみるのが1番手っ取り早いはずである。
それを聞いた留三郎は一瞬で「あ、これ面倒くさいやつだわ。」と言う表情をしたし、どこぞの不運も苦笑いをしてなおかつ素早く視線を逸らした。


「……い、委員会の時間だ。」
『今日は伊作が当番の日じゃないでしょ。』
「壊れた塀の修理を『昨日直し終わってたよね。
今日は二人とも仕事が無いの!暇なの!これはもう私のお手伝いをする他ないの!』
「「あるよ!!!!!!!!」」


口を揃えて二人が大声を上げすぐさま部屋から逃げ出そうとしたようだが、留三郎の腕を掴んで引き留めたし、伊作に関しては一歩踏み出した瞬間に滑って転んだので、二人はここから脱出することができなかった。


『さて、さっそく。』
「どこに連れて行く気だ浅彦!!!!!
やめろ!!!!!」
「留三郎もう諦めるんだ!!!!」
「何諦めてるんだ伊作!!!!
俺は屈しない、屈しないぞ!!!!!」
『ほらはやく!』
「絶対に行かない!!!!!!!!」


往生際が悪い留三郎はしばらく私に引きずられていたけれども、部屋を出ると静かになり少ししてから自分で立ち上がって私と伊作についてきてくれた、嬉しい。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ