いえ結構です

□委員会と
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大好きな甘味屋の大福を乗せた皿を持って、小走りで廊下を渡る。
今日も委員会活動頑張ろうお菓子をたくさん食べようと張り切っていつものお部屋に入ると、まだ下級生の二人は来ていなかったし上級生も揃っておらず、鉢屋先輩だけが机に突っ伏していてだらりと上半身をあずけていた。


『あれ、まだみんな来てないんですか。
尾浜先輩も一緒じゃないし。』
「勘右衛門は掃除があるとか言っていたから私だけ先に来たんだ。」
『なるほどなるほど。
あ、今日は大福を持ってきましたよ、おいしいやつです。
みんなが来たらお茶を入れて食べましょう。』


机の上にお皿を置いて、机を挟んで鉢屋先輩の前に座る。
先輩はそのままの体制で、私の顔を見るので自然と上目遣いで見られることになる。
普段は私が上を向いて話すので、なんとも不思議な感じである。


『お疲れですか?』
「いや、そうでもない。
こんな風に君のことを見たらどんな顔をするかなと思ってね。」
『ちょっと気持ちが悪いですね。
こんな顔しかしないですよ。』
「それがいい。」
『先輩気持ち悪いですよ。』


あからさまに頬が緩む鉢屋先輩に対してこっちは頬が引きつる。
先輩の将来が心配で仕方ない。
頬杖をついて鉢屋先輩を精一杯の気持ちで見下してやる。


「そういえば今日は手裏剣のテストがあったそうじゃないか。」
『ありましたありました。
でもそんなにうまくいきませんでしたよ、あれってなんであんなに調子にバラつきがあるんですかね。』
「なんだ、あまり得意じゃないのか。
今度私が手取り足取り教えてあげようか?」
『教えて欲しいですけど手も足も取らないでください。
先輩ペタペタ触ってくるの嫌です。』


私の片方の手をむにむにと触っていた先輩がその一言でピタッと動きを止めた。
まるで年頃の女の子とその父親のようである。


『……半分冗談です。』
「半分本当なのか……。」
『そりゃあそうですよ!
この年になってペッタペタ触られてどんな顔すればいいんですか!』
「もっと素直に表現するといい。」
「また何を……。」


そんな事を言っていると、ガラリと戸が開いて尾浜先輩、庄左ヱ門、彦四郎が入ってきた。
鉢屋先輩から逃げるようにその場から離れ、尾浜先輩にびったりしがみついて後ろに隠れる。
一年の二人と大して身長が変わらないから今この状態だと私の方が子供っぽくて年下に見えるんだろう。


『鉢屋先輩は今日意地悪だったので、大福を一個少なくします!
今日はその大福をかけて皆さんでじゃんけんしましょう!
庄左ヱ門、彦四郎、お茶の用意をしに行きますよ!』


ニヤニヤと笑っている鉢屋先輩を睨んでやって、尾浜先輩から離れる。
一年生二人の手をむんずと掴み、教室を出た。


「あの銀の表情はとても良い。」
「それはわかるけど流石に気持ち悪い……。」


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