儚く…そして美しく

□各々の意識
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コンコン

「失礼します」

「どうぞ。おや、珍しいな。キョウが一人で私の部屋にくるとは…なにかあったのかい」
あぁ…なんでもお見通しな団長が嫌だ。
だからって、なんで団長を選んだか?って言われると
多分言いたいことをわかってもらえる気がしたし、…なによりリヴァイさんと付き合いが長いから……
「先に伝令もなしに…忙しいのわかってるのにすみません…」
「キョウに頼られているのに時間はいとわないよ」
さっ、座って。と目の前のソファに促された
「リヴァイの事だね」
やっぱり、解っていた
座ると同時に単刀直入に言われた。
うすうすは気がつかれていたんだな、と思うし
なんせリヴァイさんの様子がおかしかったのは少し前から
「あの…リヴァイさんに…最近凄く避けられてる気がします」
「ほぉ」
「ちょっと前までは本部の会議にも連れていってもらってましたが…補佐なのに旧本部に置いてきぼりだし、他の兵士と話をしてたり、手紙貰ったりしてると、さぼっているのか?とか…訓練時もとても厳しいし、104期と話してると怒られるし…おじいちゃんに紅茶入れると、睨まれるし…ここにくるのにも渋られたので、黙ってきました…」
そりゃ兵士長だし忙しいのはわかる。その分補佐しなきゃいけないのが俺の仕事だ。それに監視下にあるわけだから、余計なことして手をわずらわせているのもわかっている
なら、ちゃんと仕事すればいいんだろうけど……なんか最近恐いんだもん!好きなんだけど恋愛対象だけど、あれやこれやしたい訳じゃなくて!リバエレやエレリとか暖かい目でねっちょり眺めたいのよ!!とか、一人で百面相してて気付かなかった。団長が目の前に来ていたことを
「キョウ」
「だ、団長…!?」
ち、近いっす!気が付かなかったぁあああ!さすが団長!気配がっ!そして団長の目の色って澄んだ青空ですね…とかぼんやり思ってる場合じゃないからっ
なんか肩に手を置かれててなんかえっ、団長?!
「…エルヴィン、とは呼んでくれないんだね」
「へ?」
「思えばきみは、初めから私を団長と呼んでいただろ。リヴァイはリヴァイさん。ハンジはハンジさん。あのミケにでさえさんなのに…何故私をエルヴィンと呼ばないのだい?」
えっ
いや、おっしゃっている意味がよくわからないんですが?
つまり何故人類が階級を重んじるか?でしょうか?
「近いっす団長」
「エルヴィン。」
なんだ、これ!
呼ばなきゃ放してくれない感じなのか?!
だって、団長は団長だし!エルヴィンさんってジャンとかエレンとかの特権でしょ!
つか、いや、確かにこう、なんつーか、引っ張ってくれる人つか、有無を言わせないつか、こう…鬼畜?腹黒い?うーん…人、嫌いじゃなくてむしろほら、何度も言うけどジャンとかが、ね?俺は…違うの!
「キョウ…そんな顔をされると、」
啼かせたくなる。
「ヒッ!?」
睨んでるつもりは無かったが、どうやらそう見えたらしく耳元で、…忘れてたけど…小野Dボイスで囁かれて
…キスされました。
いやいやまって!確かにファーストキスじゃないけど、これはキスとかかわいいもんじゃないからっ!
「キョウ…」
「…んっ、ンッ!」
対格差!さらに上から押さえつけられてるから余計にっくそっ、力がっ…
焔出したかったが、力が入らないし、集中が出来ないっ
それに、なにか呑まされた!
「全く…女の子がこんな時間に一人で男性の部屋に来るとは…いけない子だね」
「だ、…ん、ちょ……?」
「物分かりの悪い子だね。エルヴィン、と呼びなさい」
くそっ、ほんと力がっ
なんで?
ウソでしょ?
だって、団長そんな素振りなかったし…まぁでも鈍い鈍いとは言われたけど…
「な、ん…?」
「そうだね。君が欲しくなった。私だけのキョウ。それじゃ、駄目かな」
冷静な物言い
でも眼は違う。
まるで捕食者の眼。
逃げられない。と、思った
こわい
こわい
コワイ
死線を潜ってきたけど
かつてない恐怖。
躰が震える

「あぁ、さっきのは、ちょっとした麻酔薬と…媚薬みたいなモノだよ。薬には聡いと聞いたからね。きみの焔と怪力は封じさせてもらったよ」
おかしい、な…
だって団長って、凄く頭いいから、もし、俺の事をそうしたいと思うなら…甘い罠を仕掛けて…じわじわと…気づいたらって感じなイメージで…こんな遣り方…
躰は動かないけど、脳内はフル回転。どう考えてもおかしい、と思いたい
「おや?キョウ…まだ余裕そうだね、その顔は。そそるだけだと言うのに……」
何度も何度も甘い口付け
動け俺っ
このままだと貞操の危機っ
だって不穏な単語がっ
しかし、どんどん躰は言うことをきかず、熱くなる
「いっ、っ!」
こんなときに思うのは…今はもう会えない年下で小柄な彼…違う…シルエットは彼だけど振り向くと
「り、ば…ぃ……」
あぁ…こんなにも心を締めていたなんて…
今さら気付いても…
彼は来てくれるはず無い。だって黙って来たから…
ふと諦めかけたときドアを蹴り破る音と
スッと離された手
「エルヴィン、テメェ」
今だかつて聞いたこと無いような低く怒気を隠そうともしない声。カツカツと歩いてきて
「っ」
殴られるっ!
だが、殴られたのは団長だ
確かに拳は俺に向けていたのに
「だっ、「ははは。リヴァイのそんな顔は地下街以来だね」
「なんで庇った」
「そんな威力あるもの彼女がかわいそうだ。…悪いのは私だけだよ。」
「チッ。連れて帰る」
「…リヴァイ。」
「チッ」
リヴァイさんリヴァイさんリヴァイさん!
声を掛けたいのにもうそんな気力もなく
リヴァイさんに横抱きにされ部屋を出る。
暖かい…

そこで意識が無くなった。





























「全く…素直じゃない部下達を持つと苦労するよ」
二人が出ていった扉を見て思わず溜め息をついてしまった。
私と違ってリヴァイは強い。が、いつ死んでしまうかわからないのだから…そんな事を言えないか私も……諦めぐせが付いてしまったと思っていたが…
「あわよくば…だったんだがな…キョウ…」
リヴァイ。早くしないと私のような者が他にも現れて、キョウを奪われてしまうよ。





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