儚く…そして美しく

□油断しましま
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「うぅ…」

おにー!あくまー!とか聞こえてくるのはキョウの声。
俺とは反対側のソファに座り大量の書類とにらめっこしている。
日中エレンとキョウに庭の草むしりを命じた
その時、たまたまペトラが持っていた桶がひっくり返り、キョウは水浸しになってシャツが張り付いていて…目のやり場に困ったのが記憶に新しい
こんなガキになにを考えてるだ俺は…あの日…こいつが大人になった姿を見てるから、か…
別に手伝わせなくても良かったのだが、他の奴等のキョウを見る目が気に入らなくて、本人には関係ないが、所謂八つ当たりだ
俺のだと、…近くに置いておかねぇと気に入らない
「キョウよ」
「……」
随分おとなしいと思ったら、いつの間にか寝ていた。
ふと時計を見ると、時刻は等に日付を越してしまっている
渡した書類もきれいに終わらせていた
「悪くない」
つい、洩れた独り言。
いつもコイツは誰かしろに囲まれている
そんなコイツを今は俺が独り占めしていて、況してやこんな無防備な寝顔を見ている
ほんとにコイツはいろんな表情をするな
もっと見てみたい。
他の誰も見たことない顔を…
…我ながらこんな考え気持ち悪ぃな
だが、こんな気分は久しぶりだ

また此処で寝させてもいいが…
自制が効きそうもなさそうだ。なんて思い、部屋まで連れていくことにした。


























朝からキョウの様子がおかしかったのは気づいていた
顔がうっすら紅いのと、ふらふらしているのは前日の寝不足のせいかと思い、鍛練が足りないな…なんて言ってはみたが、よく観察してみたどうやら違うみたいだ。
少し話してる間にも無意識なのだろうか、目にうっすらと涙の膜が。それに朝より赤みの増した顔。そんな顔で上を向くな
「キョウ…お前…」
「え?なんですかリヴァイさん?」
「なんですかじゃねぇ…お前部屋で休め」
「?」
わかってねぇ。
「おぃ、ペトラ。」
「わかりました兵長。キョウ。ほら、部屋に行くわよ」
「いやーっ!!」
近くにいたペトラに、有無を言わさず部屋まで連行させた途端




「キョォオオオオッッ!」
急に聴こえたペトラの叫び声。ペトラが叫ぶなんてよっぽどのことだ。
それだけ我慢させたのかと
そこまで俺達を頼れないのかと、腹が立ち、今すぐにでも躾でもしたくなった

部屋に入ると着替えたのかおとなしくペトラの言うことを聞いていた

「ペトラ。」

「兵長。移ると大変ですから私が面倒みますよ」
甲斐甲斐しく面倒をみると譲らないペトラ。さすがに昨日水掛たのが自分だから、とかなんだろうが

「いや、俺が変る。お前は他の事が忙しいだろ。書類なら此処でも出来るし、お前はこの出さなきゃならねぇもん持って、ハンジとエルヴィンの所へ行ってくれ」
俺もそこは譲れない
それにコイツの面倒をみるのは俺だからな

「しかし兵長…」

「二度も言わすな」

「はい…キョウ、辛かったらちゃんと兵長に言ってね?宜しくお願いします…。」
本当に過保護になったもんだ
俺もそうだが…
なんか面白くねぇ

「ありがとうございます。ペトラさん。大丈夫ですから」
「うん。では失礼します」
静かになった部屋でアイツは目を泳がせてそわそわしてる
なんだ?
俺と二人は嫌なのか?
ほんと俺らしくもなく
「キョウ」
なんとなく熱を測ってみる
やっぱり熱いじゃねえか
「り、ばぁ、い、さんに…うつしちゃいますから…」
「俺は引かねぇよ。お前と違ってな」
余計な心配したのと、熱があるのを黙っていた分、いつもより軽くデコピンをお見舞いした
「うぐっ」
なんだ、その情けねぇ声は
思わず顔が緩んでしまった
「…病気の時ぐらい甘えろ」
「っ」
そして、またらしくもねぇ台詞を言ったら、コイツはふにゃと笑いそのまま布団に潜り込んだ
「どうしたキョウ」
「な、んでもないで、す…」
少し掠れた声でそんなことを言う。
なんでもなくないのはこっちだ馬鹿。
布団に潜り込んでくれたのは幸いだ
「キョウよ。早く良くなれ」

コイツ、寝たふり下手くそだな、など思いつつもきっと俺の顔は赤いんだと思う

ったく
キョウよ。
俺に安らぐ場所を与えるな…






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