儚く…そして美しく

□ある雪の日
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相変わらず古城の中は寒くて
でも今日は一段と冷えるので暖炉を焚いて寝た。
それでも寒く…
とても静か…

時刻はもう2と3の間を過ぎた頃
その中でも起きている者が…


無言で窓辺に佇むのは頭から毛布を一枚、全身に纏っているような格好で。
それは最早、性別を余計に解らないようにさせていて

音もなく降り積もる雪を眺めては…思い出したようにクスリと口角を上げ…しかし、また口を真一文字に閉じて下を向く。

余り寒さを感じないのか
そのまま暫く眺めている

「さみぃだろ」

ぶっきらぼうな口調で入って来た来訪者に、部屋の主はチラリと目だけを合わせて、また外を眺める

「キョウ」
「焔の…」
「あぁ、」
一言言えば、彼は判ったのか、そのまま窓辺に近づき無言で腰を下ろした
普段、喋る方…むしろ賑やかすぎる人物、キョウはそのまま沈黙している。
そんな雰囲気も悪くない。など先程の来訪者、リヴァイもそのまま窓の外に降り積もる雪を眺めている。
「…。今、薪を足しますよ?」
「嫌、いい。」
お前が暖かいからな。
なんて、普段の彼からは想像もしないような、台詞と行動。
キョウの被っている毛布を取り上げ、いつの間にか持ってきていた椅子に、抱っこされるように座らされた。
窓辺に座っているのも悪くなかったが、抱き抱えられて…しかも好きな人物にこうされて焦らない人などいるのだろうか…しかし、なにぶん、いつもよりシリアスになっているので、人肌って…リヴァイさんって暖かい…など、違うことをぼんやり考えて…
あっ、手冷たいや。
「リヴァイさんって暖かい人ですよね」
なんて、検討違いな事を言えば、この人の眉間の皺がちょっと増えた
「クソガキ。黙ってろ」
そのまま顔を窓際向くようにされ、痛いです。と笑うと
「なに、考えてたんだ?」
と、いつもより穏やかな声
「…。今は会えない…昔の仲間たちです。」
今のみんなに良くしてもらっているのに…
昔の…吠舞羅の話なんてしたくないのに…雰囲気に呑まれて、ポツリポツリ…
「こんな日は…鎌本が買ってきてくれた肉マンや猿比古が…コンポタくれて…美咲と二人で雪だるま作って…吠舞羅で雪合戦して…そんな風景をいつまでも飽きずに録りつづける十束さんが居て…夜は尊さんも起こして、草薙さん特製の鍋パーティーして…」
「…会いたいのか?」
首を横に振る
「会いたくない。と、言えば、嘘になりますが…なにも告げれず居なくなった事が…」
心残りです…
胸を締め付けるこの気持ち。
あぁみんなごめんなさい…
そして、もしかしたら此処でも同じ事が、いつ起こってもおかしくないんだ、なんて…少し…いや、かなり寂しかったり…
「そうか…」
そう言ったっきりまた沈黙してしまったこの人も…
逆にみんなを置いて逝ってしまうのかと不安になり
「リヴァイさん…」
好きです。と、言おうとした気持ちは…胸にしまっておこう…

今だけは…
この人の優しさに包まれて居たい……








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