しょうせつ

□福富
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※R-15くらい




君はきっと知らないだろう。実は俺が君のことが好きなことも、一人でいるときは君を思い出して自分を慰めていることも、最中に君が「靖友、靖友。」と呟くたびに俺の心臓のあたりが恐ろしく痛んでいることも。

隣で疲れ果てて眠る△△にソッと布団を掛けてやる。いつからだろうか。俺と△△がこういう関係になったのは。いつか、は覚えていないが原因は△△から荒北が好きだ、と言われた時からだったと思う。あの時から俺はずっと△△のことが好きだったが、△△もずっと前から荒北のほうを見ていたんだと知った。確か、その時から俺と△△は互いに体を求めあった。最中は俺は心から△△を感じているが、△△は荒北のことばかりを考えているのだろう。果てる時に必ず「靖友」と、あいつの名前を呼ぶのだから。(きっと彼女は無意識で呼んでいるのだと思う。)
だけど、俺はそれでもいいと思っていた。それで△△の心の隙間が少しでも埋まるのならそれでもいいと。…というのは少し後付けで、本当は俺は△△を抱けるのが嬉しいのだ。△△の心はそこにはないのだろうけど、△△を肌で感じ△△の中で果てるという行為に興奮しているだけなのだ。俺は心底最低な奴だと思う。汚い奴だと思う。だけど、こうでもしないと△△は俺の方なんて一生見なくなるだろうから。「抱いて」と△△が言ってくる時は、少なからず俺を見ているだろうから。その時の小さな幸福のためだけに俺はこういう関係を築いている。いつか、彼女が荒北のほうではなく俺のほうを見てくれる日が来ればいいのに、と叶うはずもない想いを抱きながら今日も△△の中に自分を吐き出した。

20140208

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