しょうせつ

□安
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ああ、うん。第一印象はえらい可愛い子やな、と思うてた。

おすそ分けに京伏の自転車部にポカリス持っていった時に一番最初に必ず見るのはそこでマネジやっとる○○ちゃんや。○○ちゃんはいつもニコニコ笑っとうて、喜怒哀楽の激しい子やった。なんていうか、マイナスイオン放ちまくっとったからいろいろと癒されたなあ。まさに、無垢な笑顔っつーやつ?まあ実際そういうことは知らんかったんやろうけど。気づいたら○○ちゃんのことずっと目で追っとった。まさか1年生の子好きになるとは思うてなかったなあ。
でもな、その子好きな人おるらしくてな。しかもすっごい身近なやつ。京伏自転車競技部のキャプテン、光太郎や。いっつも○○ちゃんのこと目で追っとったからすぐわかった。やけど、○○ちゃんはずーっと光太郎のこと目で追っとった。俺が見とることなんて全然気づかないで。
少し…いや、正直な話、滅茶苦茶悔しかった。
どんなに俺が彼女に近づいても、彼女から俺に近づいてくることはないだなんて悔しいに決まってるやろ?
俺、昔っから結構積極的っつうか、ジャイアニズム?って感じのやつやったから、欲しいもんは何をしてでも自分のものにする、って決めた。
そんでしばらくした時絶好のチャンスがきた。いつもならポカリス持ってきたときは○○ちゃんと他の部員がチラチラおったけど、そん時は○○ちゃん一人だけで他の奴らは全員練習に行った後やった。

「あっ安さん!いつもありがとうございます」

部室の入口で、箱を持った俺を視野に入れると○○ちゃんはへにゃりといつものような笑顔で笑った。そんな無垢な笑顔がこれからすることによってどう変化するのか考えるだけで、ゾクゾクした。

「なあ、○○ちゃん。」

「はい!なんでしょうか?」

「今日のな、いつもよりも少し多めに入れてきたからめっちゃ重いねん。よかったら一緒に持ってくれへんか?」

「えっそうなんですか?ありがとうございます。ぜひ、手伝わせてください」

そういうと○○ちゃんはとてとてと俺の近くまで寄ってきて箱を持つのをてつどうでくれた。もちろん、いつもより多めってのも嘘やけど。
一緒に部室まで入って、俺は○○ちゃんに気づかれへんように静かに部室の鍵を閉めた。そんでベンチの上に箱を置くのとほとんど同時に、○○ちゃんの肩を掴み勢いよく床に押し倒した。すぐ下から小さく呻く声が聞こえた。

「いっ……や、安、さん…?」

いつもと違う、怯えたような○○ちゃんの表情に俺はひどく興奮しとった。今、この時、この表情を俺が、俺だけが独占しとる。そう思うだけで嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

「っは…堪忍やで、○○ちゃん。」

スッと○○ちゃんの頬を撫でるとビ
クッと肩を跳ね上げ目にうっすらと涙を浮かべた。そんな小さな仕草一つだけでもゾクゾクと背中を駆け上がるような興奮が駆け巡った。

「俺のこと、いつまでも優しいOBの兄ちゃんや思うてたらあかんで。」

○○ちゃんの首元に顔をうずめる。あぁ、○○ちゃんの匂いや。べろり、とひと舐めするとヒッとうわずった声が聞こえた。きっと○○ちゃんのことやからこれから何されるとかわかってないんやろうな。まあいい。これを機にしっかりとその純粋な脳味噌に叩き込んだらええ。男は皆狼なんやから。

20140207

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