しょうせつ

□水田
1ページ/1ページ


チャイムが鳴り響く中、俺は教室に戻らず屋上で寝そべっていた。最近、授業が全くといっていいほど身に入らん。この間も小テストで史上最悪の点数を叩きだしてしもた。こんなことしてちゃ進級できひんことはわかってんねんけど、なあ。ハァ、と小さくため息を吐いた。ここんとこ最近全然いいことがなかった。寝坊して遅刻するわ部活で失敗するわサイフは落とすわエトセトラ…そんな漫画のような出来事ばかり起こっとった。あれか、厄年ってやつなんかなあ。もう一度小さくため息を吐いて目を閉じた。どうせ、授業受けても身に入らんねんし、1,2時間くらいええか。


…あ、やべ、爆睡してもうた。うわー、ちょっと目閉じただけやったのに。今何時や。腕時計を見ると時計は昼を回って午後の授業が始まっている時刻やった。やっべ。3時間以上寝てもうた!昼飯…ていうかさすがに怒られるわ!やってもうた!ガバッと体を起こしたとき、初めて横に誰かいることに気づいた。ギョッとして横を見ると、自転車部のマネージャーの△△さんが寝とった。なんで、とかいつから、とかいろんな疑問が目まぐるしく頭の中を駆け巡った。と、とりあえず、起こした方がええんやろうか…?もし△△さんも俺と同じ境遇にいるならそうしてあげてほうがええやろうし。ていうか△△さん受験生やのにこんなとこでサボっとってええんかな…

「あのー、△△さん?」

返事なし。あちゃーこれは完全に爆睡してるタイプやわ。

「△△さーん…もうお昼っすよー」

「…んんー……」

「あ、起きましたあおぁああぁ!?」

唸り声が聞こえたので起きたのかと思い少し近づくとグイっと腕を思いっきり引っ張られてバランスを崩し、そのまま△△さんの胸の中にダイブした。うわー!!うわー!!あかん!これあかんやつや!!

「なななな△△さん!!何してますの!?」

どうにかして離れようとするが頭をガッチリと押さえつけられていて動くに動かれへん。△△さん力強っこんな細い腕のどこにそんな力あんねや!あ、やばいすっげえいい匂いする…それになんかこう、全体的にやわっこいなぁ…っていやいやいや!何言うとんねん水田信行!目ぇ覚ませ!んぎぎぎ…となんとか腕から抜けようとするが、無念。ほんま、堪忍やわ…抜けれないと断念し力を抜くと△△さんの腕にまた少し力が入った。ふわっと一層匂いが強まった。う、わ…ほんまヤバいわこれ…ていうか、あー、授業…まあ、ええか別に…また今度友達にノート見せてもらお…ふわーあ。なんかまた眠うなってきてもうた。もう一度寝てまおか…すぐ近くで聞こえる△△さんの心音を子守唄に俺はもう一度目を閉じた。

20140203
水田くんってちっこくて抱きしめやすそう

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ