しょうせつ

□石垣
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石垣)の続きみたいなの


あれから、俺はよう△△を目で追うようになった。廊下ですれ違う時とか、友達と話しとる時とか、体育やっとるとこを窓から眺めたりとか。…あかん、俺ストーカーみたいになっとる。反省せな。
どうも俺はめっぽう△△に惹かれてもうてるらしい。

「(…あんなことが、あったからや…)」

あの時のことを思い出すたびに顔が熱うなってしまう。それを悟られないように顔を手で覆って大きく息を吐く。俺は悪うない。全部△△のせいや。△△があんなことせえへんかったら俺はこんなことで悩んでへん。△△がなんであんあことをしたのかはわからんが。あーまた顔熱うなってきてもうた。ああもう。机にペタリと顔を付けるとヒンヤリとした感覚が肌を伝って熱を冷ましていく。もうあかん。全然勉強に集中できひん。これでも受験生やねんけどなあ。もうええわ。このまま寝たろ。先生の声を聞きながら俺はゆっくりと目を閉じた。


「うぃー…す…」
部室の扉を開けると誰もいなかった。なんや珍しいな。今日は俺が一番かー。そう思いベンチにカバンを置くと後ろから唸るような声が聞こえた。誰もおらんと思うとったから驚いて振り向くと△△がイスにもたれかかって寝とった。なんでこんなとこで、とか、えらい器用な寝方しとるな、とかいろんなことが頭ん中かけ巡ったが、とりあえず何かかけたらな風邪引く。という考えが浮かんだ。しかしブランケットなんて持っているはずもなく。見渡してみるが寒さを凌げる程度の布もない。どないしよかと考えて、ふと自分の服を見る。ああ、丁度脱がへんとあかんかったし、これなら寒さもしのげそうやな。…ちょっと汗臭いかもしれへんけど。まあ、大丈夫やろ。俺は服を脱ぎ、△△の肩にそっとかけた。かけた瞬間、△△からふわりと花のような匂いがして、俺は反射的に後ろに退いた。

「……っ」

脳裏には、あんときの△△が鮮明に映し出された。ああもう、またか。また顔が熱くなる感覚がする。もうこれ今日何回目やねん。ほんま腹立つわあ俺。
チラリと△△のほうを見る。スースーと規則正しい寝息をたて気持ちよさそうに寝とる。あの形のいい唇も、呼吸するたびに少し動いて、

「(て何考えとんねん俺!!変態か!!)」

べチーン!と自分の額を叩く。もうあかんわ俺。ほんまに△△に毒されてもうたみたいや。少しヒリヒリと痛む額を抑え(ちょっと強く叩きすぎたわ)、もう一度△△をチラッと見る。全く起きる気配なくスヤスヤと眠っている。……ちょ、ちょっとくらいちょっかいかけても起きひんやろか……?って、だから何考えとんねん!!いやでも、△△のせいで、こんなんなってもうたんやか、ら…ちょっとくらい、ええかな…?ゆっくりと△△に近づく。近づくたびに花のような香りが強くなる。あ、なんかこの匂いクセになりそうやわ。(今の、すっげえ変態くさいな)頬を手で優しく包む。うっわ、やわらか…俺らと全然ちゃうわ…。それから俺は、ゆっくり顔を近づけて、

「…っ!」

やってもうた、やってもうた。やってもうた!もうあかんわ。顔が尋常やないくらい熱い。あー、でも、うん。これでおあいこや。多分!こんなことしたって、御堂筋が知ったらなんて言うやろうか。今度はほっぺふにふにじゃすまんかもしれへん。ていうか、井原たちが来てまう前にこの顔どうにかせえへんとあかんわ。とっとと着替えて先に自転車乗っとくか!よし!


「…おでこ、かあ」

ちょっと残念だったなあ。なんて。

20140127.
修正129
無駄に長い

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