しょうせつ

□御堂筋
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これはどういうことなのだろう。部室のドアを開けるとそこには御堂筋くんが一人いて、話しかけようとした瞬間その細い腕に抱きしめられた。いきなりのことに私の体は対応しきれずにそのまま座り込んでしまったが、御堂筋くんは気にせず私を抱きしめ続けた。ついさっきまで自転車に乗っていたのだろうか。彼の匂いと一緒に汗の匂いも微かに感じた。今まで手を握る程度のスキンシップはあったけど、ここまで露骨で大胆なスキンシップは初めてだった。そのせいで私の心臓はいつも以上に早く音を刻んでいた。

「み、御堂筋、くん…?どうしたの?」

そう聞いてみるが案の定返事が返ってこない。一体どうしたというのだろう。未だ宙を舞っている手をポスンと彼の頭へ置く。ぎこちなく彼の頭を撫でると背中に回っている腕に一層力が入った。一体その細い腕のどこにそんな力が収まっているのだろうか、と思うくらい強い力で抱きしめられていた。

「み、みど」

「…黄色」

「…き、いろ?」

「○○ちゃん、の、黄色い音。響いとる」

そう言うと御堂筋くんは私の首元に顔をうずめた。長い髪が当たって少しくすぐったい。
黄色い音、とは一体なんのことなんだろう。

「御堂筋、くん…?」

「○○ちゃん。○○ちゃん、は、ボク置いてったり、せえへんよな?」

「え…?」

「ボク、もう、黄色い音失うん、イヤや…」

ポツポツと紡がれる御堂筋くんの声は、いつもの威厳のある声とは大きくかけ離れていて。まるで小学生が何かをねだるような声だった。
気づいたら撫でるのを止めていた手を再び動かす。今度は、小さい子をあやすようにポンポンと優しくたたくように。

「…大丈夫。…うん、大丈夫だよ。私はどこにもいかないから。ずーっと御堂筋くんの隣にいるから。」

「…ほんま?」

「うん。約束する。」

「……ん。」

そう言うと御堂筋くんはいつもの少し不気味な笑顔ではない、ふにゃりとした笑顔を浮かべた。私は彼の頭を抱えるように抱きしめるとまた少し強く抱きしめられる。ああ、彼は本当はとても弱い人間だ。小さくて、とても脆くて。私は彼を支える大きなものにはなれないかもしれないけど、せめて彼を受け取る器くらいにはなれるといいなと思いながら、私はゆっくりと目を閉じた。

黄色が恋しい御堂筋とそんな御堂筋が愛しい夢主

20140126

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