しょうせつ

□井原
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休み時間。私たち女子は窓から運動場の方を見ていた。理由はサッカー部のイケメンの、確か竹島くんとかいう子が次の時間運動場で体育をするかららしい。
私はあまりというか全然興味はなかったのだが友達がその竹島くんの大ファンらしいので仕方なく付き合っている。といっても、私の席は窓際なので席に座っているだけなのだが。
「竹島くーん!」という数多くの黄色い声援がとても耳に痛い。

「はぁー…やっぱ竹島くんかっこいいわぁ…」

「そう?普通じゃないかな…」

「んもー○○はそういうことに興味なさすぎやねん!」

「そうやでー!そんなんじゃ一生彼氏できひんで!?」

「うーん…別に欲しいとも思わないしいいなじゃないかなぁ」

「えー!なんで!?」

なんで、と言われても本当に興味がないのだから仕方がない。恋愛とか、そういう感情は今まで持ち合わせたことはなかった。「せっかく○○はかわいい顔しとんのに勿体無い!」という言葉は嬉しいが。
ボーっと窓の外を見ていると横にいたもうひとりの友達が「あっ石垣くんや!」と声を上げた。

「あれ、石垣くんもA組やったっけ?」

「ううん、確かB組…あれちゃう今日合同体育やからちゃうの?」

「へぇー、石垣くんもかっこいいよねー!」

「わかるー!顔だけやなく性格もイケメンやんなー!」

気づけば京伏自転車競技部についての会話になっていた。石垣くんがどうのこうのー2年生の水田くんもなかなかー。自転車競技部か…よく、放課後に走っているところを見かける。今も、自転車競技部3年生が偶然一緒になったらしく石垣くん、辻くん、井原くんで仲良さげに喋っている。

「私井原くん好きかも」

ボソッと呟いたつもりがけっこうな声が出ていたらしく。友達は私のほうを見ると「えー!!」と声をあげた。

「うっそぉ!井原!?」

「○○趣味悪ー!あいつブスやん!」

「えっ○○ってもしかしてブス専!?」

なんて言われようだ。別に、井原くんのことはブスだとは思わないし、愛嬌のある顔していると思うけど。
そこでチャイムが鳴り響いた。友達は残念そうな顔をしながら自分の席に戻っていく。私は元々窓際だったのでボーっと窓の外の井原くんを見ていた。井原くん髪の毛サラサラだなあ。羨ましい。
すると井原くんは急に振り向いて、こちらを見た。え、すごい目合ってる。完全に目をそらすタイミングを逃した。井原くんとがっちり目が合っていてとても気まずい。とりあえず、手を振ってみた。あまり喋ったこともないのにこんなことされるなんてあまりいい気持ちではないかもしれないが。しかし井原くんはパァッと笑顔になりブンブンと手を振り返してくれた。そんな姿が可愛らしくて自然と笑顔になる。
ガラガラと先生が扉を開ける音が聞こえたので手を振るのをやめ前を向く。次の授業は数学だ。


「辻、辻!今△△さんに手ぇ振ってもらえた!」

「へぇ、よかったやん」

「これってもしかして、脈アリとかやったりするんやろか…!?」

「さぁ…告白してみたら?」

「アッホ!んなことできるわけないやろ!?」

「…もう勝手にしとけや」

「言われんくても勝手にしときますーあっ石やん、石やん!」


20140407

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