ぶっとばせ!
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「や、やっぱり思った通りだ。」
「なんだよ。なにが思った通り?」
「これだよ」
「これは・・・虫刺され?」
新八が隊士の首筋を指差す。覗きこんでみるとそこには通常より少しでかい虫刺されのあとがあった。
「そう。この人も、この人も、この人も、幽霊にやられた人は皆一様に蚊にさされたような傷がある・・・」
「じゃぁあれは・・・幽霊じゃない・・・?」
「よかったアルな〜無事解決して」
「そうだな」
食堂の席について特大おにぎりを食べる神楽に返事をする。
ちなみに絶妙なタイミングの悪さで女中がいなかったので俺お手製のおにぎりだ。いやそもそもなんで朝から神楽に特大おにぎり食べさせてんだ俺。
「ねぇ李斗」
「んー?」
「今度はうちに遊びに来てヨ」
「え?」
「李斗の家に私は遊びに来たアル。だから今度はうちに来てヨ。定春もきっと会いたがってるヨ」
笑った神楽の顔になんだか頬が緩んだ。
今回は遊びに来たんじゃないだろとか思ったがあえてスルーで。
「そーだなーそのうちなー」
銀時の家だし行ったらめんどくさそうだけど定春もいるし行ってやろうか。
そうは思ったけど緩んだ顔を見られたくなくて頬杖をついて若干顔をそらす。返事をする声も期待するように向けられる神楽の視線に照れくさくなって変にそっけなくなってしまう。
「神楽ちゃんこんなところにいたの」
「あ、新八」
俺が返事をしたタイミングで新八が部屋に入ってきて神楽の食べているおにぎりをみて呆れたようにため息をつく。
「新八も食べるアルか?李斗のおにぎり。遠慮は要らないアルよ」
「我が物顔ですすめてるけどそれうちの米な。あと誰が作ると思ってんだ。」
「ごめん李斗」
「別にいいけど」
朝から総悟と神楽に殴り飛ばされて(昨夜のアレの件で)かわいそうな気がしないでもないから許してやった。
「あ、そうだ。神楽ちゃん、そろそろ帰るから銀さん呼んできて」
「えーでも報酬貰ってないヨ。銀ちゃんも貰うまで粘るって言ってたアル。」
「どんだけ図々しいのアイツ。なんもしてねーだろ」
「ホントにごめん」
「ねぇなにもくれないアルか?李斗」
「神楽ちゃん」
おにぎりを腹に全ておさめた神楽が俺を揺すぶりにかかる。
それを新八がなだめるけど全く効果なし。
「あげただろー?特大おにぎり。
神楽だけ特別にだけど」
言ったら俺を揺する動きが止まった。あれで納得したのかと思って神楽の方を見たら目があった瞬間に神楽の顔が真っ赤になった。
「え、どーした神楽。」
「李斗のバカー!」
「えぇ・・・なんで」
叫んでどこかに走り去る神楽は理解不能だ。もしかしておにぎりだけですまそうとしたから怒ったのか。
日頃あんな万年金欠の所で暮らしてたら金にがめつくなってもおかしくない。
「李斗・・・」
「なんだよ」
神楽が走り去ったあとも残っていた新八がよくわからない表情を浮かべていた。
「今の無自覚?」
「?なんのこと?」
いっている意味がさっぱり分からなくて首をかしげる。
今のっていつのだ。具体的に言え。
新八がものすごいため息をついた。
「幸せ逃げるぜ?」
「うるさいよ天然たらし。いだっ!?」
新八のくせに生意気なことを言うので制裁を下した。
そしたらまたため息。なんなんだ。
「約束は守ってあげなよ」
「約束?」
「家に遊び行くっていうやつ」
「あぁわかってるよ。ていうか聞いてたのかよ。変態」
「誰が変態だぁぁ!!」
「お前だよ。盗み聞きとか趣味わりぃぞ」
「そ、それは・・・いい雰囲気だったからつい・・・」
「え?」
聞き取りにくい声でゴニョゴニョ話す新八。全く聞こえない。
「いいいや、いい!なんでもないよ!あはは〜それじゃぁ僕ら帰るね!」
「なんだったんだ?」
新八が走り去って俺しかいなくなった食堂で、その声に答える人は当然いなかった。