ぶっとばせ!
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「う・・・あ・・・あ赤い着物の女が・・・う・・・来るこっちに来るよ」
布団に横たわって呻く近藤さん。その周りにおれたちはあつまり、様子をうかがっていた。
「うぐっ!」
「近藤さ〜んしっかりしてくだせぇ。いい年こいてみっともないですぜ寝言なんざ。」
「これはあれだ。昔泣かした女の幻覚でも見たんだろ。」
「近藤さんは女に泣かされても泣かしたことはねぇ」
「じゃぁあれだ。オメーが泣かした女が嫌がらせしにきてんだ」
「そんなタチの悪い女を相手にした覚えはねぇ」
総悟に首をしめられる近藤さんは皆総スルーの方向で決まったらしい。
ゴキゴキいってる。
「えーじゃぁ李斗だろ。どーせその似非紳士キャラで思わせ振りな態度とって何人も泣かせてきたんだろう!」
なんで俺に話がまわってくる。ビシッと指を指してくる銀時がうざい。
「なんで俺なんですか。指差すなうざいです。」
「じゃぁ何?」
「しるか。ただこの屋敷に得体のしれねーもんがいるのは確かだ」
「・・・やっぱり幽霊てすか」
「あ〜?俺ぁなぁ幽霊なんて非科学的なモンは断固信じねぇ。ムー大陸はあると信じてるがな」
「?」
そういいながら銀時は神楽の頭に鼻くそを擦り付けている。それに気づかない神楽に俺はあわれみの視線を送っておいた。
「あほらし。付き合いきれねーや。オイてめーら帰るぞ」
「銀さん・・・
なんですかこれ」
立ち上がった銀時は、自然な流れで神楽と新八の手を握っていた。
「なんだコラ。てめーらが恐いだろーと思って気ぃつかってやってんだろーが。」
「銀ちゃん手ぇ汗ばんでて気持ち悪いアル」
・・・どうやら銀時はロリコンの上に幽霊の類いが恐いらしい。
ふと、総悟のほうに目を向けると総悟はニヤリと笑った。その意味が分かって俺も口角をあげる。
「「あっ赤い着物の女!!」」
ガシャン!
銀時が押し入れのなかに自ら突っ込んでいった。
「何やってんすか銀さん?」
「いや、あの、ムー大陸の入り口が・・・」
新八が冷めた目で質問するのを、苦しいいいわけで回避しようとしている。
「旦那アンタもしかして幽霊が・・・」
「なんだよ」
「土方さんこいつは・・・アレ?」
さっき土方がいた場所には誰もいなかった。その代わり、部屋のすみに置かれた壺から人の足が出ていた。絶対土方だ。
「土方さん、何をやってるんですか」
「いや、あのマヨネーズ王国の入り口が・・・」
銀時と同じような言い訳をしてくる土方。だめだこの大人たち。
そう思って俺たちは二人に背をむけた。
「まてまてまて!違うこいつはそうかもしれんが俺は違うぞ」
「びびってんのはオメーだろ!俺はお前ただ胎内回帰願望があるだけだ!!」
「なるほど。土方さんはマザコンでしたか」
「ちげーよ!」
「わかったわかった。ムー大陸でもマヨネーズ王国でもどこでいけよクソが」
「「なんだそのさげすんだ目はぁぁ!!」」
神楽が二人を貶している横で俺は見てしまった。
「ん?」
まさか本当にいるとは思わなかったその存在を。
「?」
「なんだオイ。驚かそうたってムダだぜ。同じ手は食らうかよ」
『それ』に背を向ける二人は気づかないらしい。
神楽が袖を引っ張ってきた。
「李斗・・・どうすればいいアルか」
「どうって・・・どうしようもねーよな。」
「・・・オイしつけーぞ」
二人は未だ気づかずに、俺たちが嘘をついてると思ってる。
「とりあえず、逃げようか」
「「「ぎゃああああああ!!」」」
俺が言って方向転換して走り出したと同時に一斉に悲鳴をあげて逃げる三人。
引き留める声がしたが俺たちは走った。
「みっみっみっ見ちゃった!ホントにいた!ホントにいた!」
「銀ちゃああん!!」
ドォン!
「うおおおおお!」
「きっ・・・きり抜けてきた!
いや、まて。しょってる!?女しょってるよオイ!!うわばばば!!こっち来るなぁぁ!!」
凄い音と共に出てきたのは女を背負った土方と銀時だった。
とりあえずこっちに来るので俺たちも全速力で逃げた。とりつかれて死んでしまえ二人とも。
「ギャアアアア!」
遠くで悲鳴が聞こえるなか、俺たちは倉庫に身を隠す。
「やられた。今度こそやられた。」
「しめたぜ。これで副長の座は俺のもんだぃ」
「やったな総悟。」
「言ってる場合か!」
新八はツッコむが、これは喜ばしいことなんだから仕方がない。
「オイ誰か明かり持ってねーかぃ?あっ!蚊取り線香あった」
「なんでだ」
「なんだよアレ〜なんであんなんいんだよ〜」
「新八、銀ちゃん死んじゃったアルか?ねぇ死んじゃったアルか」
「神楽、そう落ち込むな。あいつなんていてもいなくてもおんなじようなもんだろ。アイツがお前に何を与えてくれたんだ。心配するだけ無駄だ」
「それもそうアルな」
「なんてこというんだよ!神楽ちゃんも納得すんな!」
辺りがほんの少しだけ明るくなった。総悟が蚊取り線香に火をつけていた。
「実は土方さんを亡き者にするため下法で妖魔を呼び出そうとしたことがあったんでぃ。ありゃぁもしかしたらそんときの・・・なぁ李斗?」
「いやお前今日やたら俺を共犯にしたがるけどやってねぇから。知ってたけど。」
「アンタどれだけ腹の中真っ黒なんですか!?李斗もしってたんなら止めろよ!!」
「元凶はお前アルか。おのれ銀ちゃんの敵!!」
「あーもうせまいのにやめろっつーの!」
総悟に神楽が掴みかかり、喧嘩が始まった。狭いので被害に遭わないようにできるだけ後ろに下がっておく。
「なんでお前ら会うといっつも・・・ん?」
「どーしたしんぱ・・・」
いた。扉の隙間から見えた。女の顔が。
「ぎゃああああああ!!でっ・・・でっでで出すぺらぁどォォォ!スンマッセンとりあえずスンマッセンマジスンマッセン!」
頭をガンガンぶつけてひたすら謝る新八。多分謝っても幽霊は逃げないと思う。
新八の慌てように若干ひいていたら今度は総悟と神楽の頭を掴んだ。
「てめーらも謝れバカヤロー!人間心から頭下げればどんなやつにも心通じんだよバカヤロー!!」
なにするのかと思ったら二人の頭を地面に打ち付けた。普段の新八なら想像できない行為だが多分恐さで我を忘れてるらしい。
あれだけ頭下げればあの女も許してくれるのではないかと期待を込めて隙間を見れば、女の顔はどこにもなかった。
新八の謝り倒し作戦がきいたのか。
「新八」
「あのホントォ!靴の裏でもなめますんで。」
「新八」
もう危機は去ったことを知らせようとするが必死過ぎて聞こえてない。
「勘弁してよォマジで」
「聞けよ」
「僕なんて食べてもおいしくない・・・」
「そりゃおいしくないだろーよ」
「ん?」
前を向いた新八はようやく気づいたらしい。
「アレぇ?いない。」
「気づくの遅い。」
「あ、李斗。」
「ヤバイよお前。総悟と神楽気絶してるじゃん。殺されるなこりゃ」
俺の言葉に顔を青くする新八。最悪だとか呟いてるが俺は助けない。
「そんなことよりさ、なんでアレいなくなったんだ?」
「さぁ僕にもさっぱり・・・!」
何か気づいたような新八の視線を辿るとそこには蚊取り線香が。
「蚊取り線香?」
「李斗倒れた隊士たちのところに案内してくれない?」
「いいけど、なんかわかったのか?」
「うん。確かめなきゃ分かんないけど、僕たちは大きな間違いをしていたのかもしれない・・・」
顎に手をあてて考え込む新八。
「探偵気取りか。」
「いだっ!なんで叩くんだ!」
「なんとなくだ」