ぶっとばせ!
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よっちゃんと呼ばれる自称ガキ大将から小遣いをせしめ、プリクラを撮った。
団子屋で団子を食べながら休憩する。団子の代金はよっちゃんからの小遣いだ。
「すごいですね〜女王さんと帝王さんはいろんなことを知ってるんですね」
「まーねあとは一杯ひっかけてらぶほてるになだれ込むのが今時のやんぐヨ」
「神楽それだれに聞いた?」
「銀ちゃんヨ」
団子のクシをくわえて話す神楽は今自分が話した単語の意味は分かっていないようだ。だが余計なことを話した銀時は処刑する。
「女王さんと帝王さんはいいですね自由で。私城からほとんど出たことないから友達もいないし外のことも何にもわからない。私にできる事は遠くの街を眺めて思いを馳せることだけ・・・あの街角の娘のように自由に跳ね回りたい自由に遊びたい、自由に生きたい。そんなこと思ってたらいつの間にか城から逃げ出していました。」
これ以上ない恵まれた環境で何を思って脱走したのか疑問だったがそよなりに考えるところがあったらしい。
無理に連れ戻さなくてよかったと思っていたら人ごみの中に見慣れたV字が見えた。それはまっすぐこちらに向かってくる。
「でも最初から一日だけって決めていた。私がいなくなったら色んな人に迷惑がかかるもの・・・」
「その通りですよ。さぁ帰りましょう」
目の前に来た土方はそよを見下ろして言った。そよのほうも抵抗することなく立ち上がる。時間切れらしい。だが立ち上がるそよの腕を神楽が掴んだ。
「!」
「なにしてんだてめぇ」
土方の問には応えず串をくわえたまま口角をあげる神楽。そよを連れて逃げる作戦らしい。
土方に向かって飛ばされた串はあっけなく叩き落とされたが隙を作るには充分だった。
俺は土方の手前、あからさまな謀反行為をするわけにはいかないため傍観に徹する。始末書とか面倒だし。
「オイッまてっ!!」
待てといわれて止まる奴は今この場にいない。
「確保!!」
土方の号令でパトカーから、建物の影からノースリーブの奴等がぞろぞろと現れる。ノーマルの隊服が一人もいない事から真選組の頭の弱さがうかがえる。大丈夫なのか真選組。
そよの手を引いて逃げる神楽は傘を振り回し道をあける。
それを見届けて俺はいまだそこにとどまる土方に目を向ける。
「一人でどこほっつき歩いてるかと思ったらそよ姫と一緒だったとはな。なんですぐ報告しなかった。俺が連絡したときも側にいたんだろ」
「さぁね。俺ぁ今日真選組じゃぁないんですよ」
「は?」
意味が分からないといった顔をする土方には答えず神楽たちの向かったほうにいく。
「近藤さん俺いってきます」
「え?ちょ、李斗?」
呼び止める近藤さんの横をすり抜けて神楽と同じように建物に飛び乗った。そこから神楽たちの向かった方へ行くと話し声が聞こえてくる。柵をこえて屋上の床に足をつく。ちょうどそよがこっちに向かって来るところだった。
「李斗」
俺に気づいた神楽が眉をさげる。
「それじゃ」
少しうつむいて離れて向かい合った俺と目を合わせようとしないそよは振り向かずに神楽にいった。
「待つネ!ズルイヨ!自分から約束しといて勝手に破るアルか!李斗もそう思うでショ?」
「・・・将軍様の妹がいないと上がうるせぇから。」
俺の言葉に口を引き結んで黙りこむ。俺からそよに説得の言葉が出ないとわかるともう一度そよに視線を向ける。
「私もっと遊びたいヨ!そよちゃんともっと仲良くなりたい!ズルイヨ!」
「そーです私ズルイんです。だから最後にもういっこズルさせてください。
一日なんて言ったけどずっと友達でいてね」
振り返って告げられた言葉に呆然とした顔をする神楽。
それからそよは俺に視線を向けた。
「帝王さんもですよ?」
「もちろん。」
俺が頷くとそよは笑った。
3人で下に降りていくとノースリーブ(二名除く)のバカ共がまちかまえていた。
ちなみにそよは俺の正体を最初から分かっていたらしい。隊服思い切り着てるしそりゃばれる。
「李斗てめぇっ」
俺の姿を見るなり睨み付けて文句を垂れようとした土方を手で制しなだめる。
「まぁまぁいいじゃないですか。姫様も無事だったことだし。ぶっちゃけ色々説明すんのめんどくせぇんで俺が関わってたくだりは全て無かったことにしましょう。」
「するわけねぇだろ。帰ったら始末書だ。」
「あ、そよ!」
「聞けよオイ」
始末書とかいう訳のわからない単語を出す土方は完全に視界から外し、パトカーに乗ろうとしたそよを呼び止める。
「悪人面ばっかだけどそれでよかったらいつでも真選組(うち)にこいよ。半日じゃぁ遊びたんねぇだろ?」
「はい!ありがとうございます!」
土方が俺を睨んでいる気がするが無視。今回は場所がいけなかったんだ。歌舞伎町は世間知らずの姫にすれば確かに危ない場所だ。だが、真選組屯所内なら隊士もたくさんいるし安全だと思う。
遠ざかっていくそよを乗せたパトカーに神楽と一緒に手をふって見送る。
パトカーもその窓から身を乗り出して手をふるそよも見えなくなったところで手を下ろす。
隣にいた山崎が飲みかけのフ○ンタを持っていたので奪って飲んだ。
「あ!」
「李斗、私にもちょうだいヨ」
「ん」
「いや、なんでふつーにあげてんの」
山崎の抗議もむなしく、神楽によってフ○ンタは数秒で飲み干された。
恨めしげに見てくる山崎に空き缶を押し付ける。
「仕事を真面目にやらねぇでジュース飲んでるから悪ぃんだよ」
「李斗君にだけは言われたくなかったよ」
ジュースを飲み干された哀れな山崎は新しいものを買いに自販機に向かう。
「私もそろそろ帰るヨ。私が帰らないと銀ちゃんが寂しがるから」
寂しがるって、銀時はどれだけ神楽大好きなんだ。やはり奴はロリコンだったらしい。
「李斗!」
山崎が気を利かせて買ってきた俺の分のフ○ンタを飲んでいると数歩先で神楽が振り返った。
山崎が俺に缶を渡すとき自分の分を持った手にものすごい力を入れていたが突っ込まないことにした。心配しなくても二本もいらない。
「今度遊ぶときはらぶほてるに行ってみたいアル!」
「ブフォッ」
神楽の発した単語に勢いよくフ○ンタをふいた。何いってんのあいつ。
神楽が大声で言うから周りにいた奴ら全員が振り向いて、口を袖でふく俺に視線が集まる。総悟がニヤニヤ笑いながら俺の方を見ている。うざい。
「李斗!!あのチャイナ娘とそういう関係だったのか!?いけません!お父さんは認めませんよ!」
すっ飛んできた必死の形相の近藤さんが俺の方をつかんで揺さぶりながら(アレ、何これデジャブ)小声で唾を飛ばす。
「誰があんたの息子ですか。それに、神楽とは何にもありません。意味わかってないだけですから。」
「李斗?」
俺たちの反応の意味が分かっていない神楽が首をかしげる。
「あー、神楽。そこはあの幻の土地だから、見つけることは難しいんだ。」
「幻の土地何回も見たことあるぜィ」
近藤さんを引き剥がし地に沈め、苦しい言い分けをすると総悟が余計なことを言う。思いっきり足を踏んでやった。総悟が痛さに悶え地面を転がる。
「そうアルか。」
残念そうにする神楽には総悟の声は聞こえなかったらしい。
「あぁそういうことだから。ていうかそもそも真選組から出ないのが条件だから」
「ふーん。分かったヨ。じゃぁね」
手をふって歩いていく神楽と、それに合わせて揺れる紫の番傘を見ながら俺はとりあえず銀時を殺す計画を立てることにした。