ぶっとばせ!
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庭から煙が上がっていた。その現場には総悟と、焼かれているカエルがいた。まさか丸焼きにして食べるつもりじゃないだろうなと疑いながら近づく。焚き火が暖かそうだ。
黙って総悟の隣にしゃがみこんで焚き火に手をかざす。
隣に俺が来たのをちらりと横目で見て思いだしたように総悟が口を開いた。
「そーいや李斗あの茶になんかいれたかぃ?こいつの顔めっちゃ腫れて気持ちワリィんでぃ」
総悟の言葉を聞いて見てみるとなるほど、本当に腫れていた。気持ち悪い限りである。見ているだけで吐き気を催す。まぁ俺がやったんだけど。
「唐辛子は覚えてるけど・・・あと何入れたっけなぁ。やばそうなの入れた気がするけど」
「まぁなんにしてもいい気味・・・・」
総悟が言葉をきったのを訝って視線の先を見ると俺たちから数メートル離れたところに土方が突っ立っていた。
「・・・・・」
土方はこっちを見たまま固まっている。
「何やってんのォォォォォ!!お前等!」
と思ったら叫ばれた。
「大丈夫大丈夫。死んではいませんよ。なんか顔が膨らんでますが」
「要は守ればいいんでしょ?これで敵おびき出してパパっと一掃。攻めの守りでさぁ」
叫びながら向かってくる土方を二人してなだめた。まったく、このくらいでキレるなんてカルシウム足りてないんじゃないか。
「貴様ぁこんな事してただですむと思って・・・」
「うるせぇカス」
「もぺ!!」
喋り出したカエルの口に薪を押し込み黙らせる。なぜ今まで静かだったのか不思議だ。寝ていたのか。
「土方さん俺もあんたと同じでさァ。早い話真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねぇ。でも何分あの人ぁ人が良すぎらぁ。他人のイイとこみつけるのは得意だが悪いところを見ようとしねぇ。俺や李斗、土方さんみたいな性悪がいて丁度いいんですよ真選組は」
おそらくさっき近藤さんの寝ている部屋でのことを言っているんだろう。
総悟の話を聞きながらさらに薪を押し込んでいく。
俺も近藤さんがいるからここにいるんだ。素性も知れない俺を快く受け入れてくれた近藤さんだからこそ。
「フン。あーなんだか今夜は冷え込むな・・・薪をもっと焚け総悟、李斗」
「「はいよ」」
「むごぉぉぉぉぉ!!」
土方の指示に元気に返事をする俺たちに身の危険を感じたらしいカエルは暴れ始めた。
「おうおうきこえねぇな。あぁん?お兄さんに分かるように人語を話してくれるかなぁ?」
なんだか楽しくなってきて、テンションが上がってくるのがわかる。今日一日振り回されたんだからこのくらい許されて当然。
そんな俺を若干ひきつった顔で見る土方。
「楽しそうだな李斗」
「めっちゃ楽しいですよ楽しすぎて間違えて殺しちゃうくらい。」
「も゛ぐっはめっそ」
カエルは薪を突っ込まれながら何か訴えるが聞こえない聞こえない。
チュインッ
そこへどこからか銃弾が飛んできた。
「天誅ぅぅぅ!!奸族めぇぇ!!成敗に参った!!どけぇ幕府の犬ども。貴様らがごときにわか侍が真の侍に勝てると思うてか」
門が開いて入ってきたのは攘夷浪士。ちらほらと奇抜な格好をしたやつらが見えるがふざけているのか。
「おいでなすった」
「派手にいくとしよーや」
「真の侍はグラサンなんてしませんよね」
「どこに目ぇつけてんのお前」
土方と総悟は刀を、俺は傘を構えたところで後ろから声が聞こえた。
「全く喧嘩っ早いやつらよ。トシ、総悟、李斗に遅れをとるな!!バカガエルを護れェェェェ!!」
近藤さんが刀を抜いて声を張り上げた。
隊士もそれに応えて走る。
俺と総悟、土方は近藤さんのいつもと変わらない姿をみて口角をあげた。
「いくぞぉぉぉ!!」
俺たちも走り出した。