ぶっとばせ!
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前方に土方と銀髪が言い争っているのが見えた。座り込む銀髪の頭上には土方の刀が突き刺さったままだ。
「あれ、李斗こんなところに居たのかぃ」
二人を傍観していると横に総悟がたっていた。
「チャンスだぜ総悟。」
以心伝心。総悟のもつバズーカを見た俺の一言で理解したらしい。しっかりと標準をあわせたあとこれから天に召される上司に餞別程度に注意を促す。
「土方さん危ないですぜ」
「「!」」
ドゴン!!
狂いなく放たれたバズーカは爆風を巻き起こした。運よくのがれた銀髪が逃げていくのが見える。そしてゴキブリ並みの生命力により生き延びた土方がそこには残されていた。
「生きてやすか土方さん」
「バカヤローおっ死ぬところだったぜ」
「チッしくじったか」
「次があるよ。そう落ち込むなって」
「しくじったって何だ!!李斗も何励ましてんだ次なんてねぇよ!!オイッ!こっち見ろオイッ!」
部下のお茶目に全力でキレる土方にうんざりした俺は浪士の立てこもる部屋に行くことにした。
「総悟、行こうぜ。あの白髪も逃げちまったみてぇだし」
「そうだねぃ。役立たずの土方さんは置いていくかぃ」
「そうそう役立たずの土方さんは置いて」
「お前等ホントいい加減にしろよ!!おい待て総悟!李斗!」
青筋を浮かべて追ってくる土方から逃げながら俺たちは浪士の立てこもっている部屋に向かった。
「オーイ出てこーい」
「マジで撃っちゃうぞ〜」
バズーカを構えた隊士と気の抜けた脅しをかける土方。浪士が立てこもっている部屋のふすまの隙間からは家具が積み上げられているのが見える。
「土方さん夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」
「やべぇビデオ予約すんの忘れてた。」
「土方さん俺が録っとくんで心配ないですよ。」
「おいちょっと待て。何ナチュラルに帰ろうとしてんだ。お前ホントにサインだけのためにここに来たのか」
呼び掛けても出てこない浪士に嫌気がさして会話に便乗して違和感なく帰ろうとした俺は当然のように連れ戻された。
「そんなことないですよ。やる気はありましたミジンコ程度に。」
「やる気が微生物並みってどうゆうことなの。ねぇ」
「そんなことよりさっさと済ませましょうよ。発射用意!!」
脅しても効かないのなら実力行使だ。本来土方の役目だった掛け声は俺が発しても有効なようだ。早く帰りたい気持ちは皆一緒らしい。
ドゴォォン!!
バズーカが放たれる前に襖は内側から蹴破られ銀髪を先頭に浪士がなだれ込んできた。
「なっ・・・何やってんだとめろぉぉ!」
「止めるならこの爆弾とめてくれぇ!爆弾処理班とかさ・・・なんかいるだろオイ!!」
銀髪の見せた爆弾によって散り散りに退散していく隊士。ヤのつく自由業の人みたいな顔が多いくせに変なところでヘタレだ。
「残念ながらうちに爆弾処理班は居ませんね。他あたってくれます?」
銀髪をなだめるようと並走しながら言うと慌てているようで怒鳴られた。
「他ってどこだよ?!つーかお前さっきの・・・」
「あと6秒ですけど」
「げっ!!」
「銀さん窓窓!!」
「無理!!もう死ぬ!!」
「歯ぁ食いしばってください天然パーマネント」
「!」
「ほあちゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぬわぁぁぁぁぁぁ!!」
このままでは全員お陀仏だと悟り爆弾ごと銀髪に回し蹴りを食らわす。進行方向は真っ直ぐに、加速した銀髪はガラス窓を突き破り外に放り出された。生存確率は低いが、攘夷浪士だ。死んでも文句は言われないだろう。
「ふぅ一件落着ですね土方さん」
外に放り出された銀髪は空中で爆弾を投げ、自分は垂れ幕にしがみついて事なきを得た。その様子を子供二人がのぞきこんでいる。安否を確認する声が聞こえるが、どうも棒読みっぽい。あれ、本当に心配してるのか。
横にきた土方はいつものようにタバコをふかす。
「まぁな。そういえばお前いつもの傘はどうした?刀も持ってねぇし」
「あぁ忘れてた。入り口に置いといたんですよ。サインもらい行くのに武装してちゃ警戒されるでしょ。取りに行かないと」
「はぁぁぁ?!武器なしで乗り込んだのか?!お前やっぱりバカなの!?バカなの?!」
さっきから人のことをバカ呼ばわりしやがって死ね土方コノヤロー。
傘はなくても拳銃は忍ばせてありますよ、と拳銃を取り出して見せる。
「それに素手でも充分戦えますよ。俺がそんじょそこらの人間に負けるわけないじゃないですか」
言い残して傘を取りに行くため背を向ける。
俺を見つめる一つの視線に気づかずに。