ぶっとばせ!

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「だからぁ!俺たちは巻き込まれたの!!何回言ったらわかんだよ!!」

廊下を歩いていて聞こえてきたのは怒鳴り散らす男の声。
池田屋に押入ってから三日たつが、今現在怒鳴り散らしている男含める三人は容疑を否認し続けている。

三日前のあの日、事件が一段落して一息ついた俺たちは完全に当初の目的を忘れていた。そう、俺たちは浪士を捕まえに行ったんだ。決して爆弾処理をしに行ったわけではない。

あの時銀髪と爆弾が外に放り出されすべてが解決した感じになっていたがその間に浪士たちは大方逃げてしまっていた。
誰だ一件落着とか言った奴。土方か。多分そうだ絶対そうだよし殺そう。

「しらをきっていられるのも今のうちだぞ。俺たちとは比べ物にならないくらい恐ろしい方をお呼びした。これで今日がお前等の命日になるだろう」

怒鳴る男の声に対抗し、別の野太い声が聞こえた。二番隊の鈴木だ。


「あ、李斗君交代?」

取調べ室の前に立っていた山崎が近づく俺に声をかけた。

「李斗君、ホントにあの人達の釈放手続きしたの?すごいふてぶてしい態度なんだけど。すごく怪しいんだけど」

眉をひそめて捕まえた3人のことについて語る山崎。
ひどい言われようだ。
一般人だったら真選組の悪人面を見ただけで泣きべそかくようなものだがあの3人は一筋縄では行かないらしい。

「怪しいとか怪しくないとか関係ねぇ。俺の非番がつぶれるのを防ぐためだ。」

今日俺は本来非番であったはずだが土方の任命で二番隊に尋問の役割が回ってきた。当然隊長である俺もその対象になるわけだ。ふざけるな。というわけで勝手ながら釈放手続きをさせてもらった。
捕まえた奴らのうちの一人である銀髪の男が桂に脅されているような場面は見ているし、子供を連れてテロ活動する奴なんていないだろうってことで。

「そんな理由だったんかいぃぃぃ!!大丈夫なのぉぉぉ?」

土方に伝えた釈放理由は伝えずに言うとめちゃくちゃ叫ばれた。山崎は俺が口からでまかせで土方を丸め込んだと思ったらしい。



「あ、李斗隊長。交代です。」

山崎の突っ込みが中まで聞こえたようで鈴木がドアを開けて顔を出した。相も変わらず泣く子はさらに泣き叫ぶ悪人面だ。

「今悪人面って思いましたよね?」

「いや?いつ見ても虫さえ殺せなさそうな優しげな顔ダトオモッタ。」

「いや明らかに嘘言ったよね。最後カタコトになってるよ。」

余計な事を言う山崎を殴り飛ばすも鈴木は都合のいいところだけ聞き取ったようで上機嫌に去っていった。鈴木は落ち込むとめんどくさいので正直助かった。



















「なんだよ。恐ろしい方が来るって恐ろしい顔で言われたからどんな悪人面が来るかと思ったらただのガキじゃねぇか。」

天に召された山崎を放っておき、室内に入ると銀髪の男が椅子にふんぞり返り俺のほうを見た。バカにしたようなアホ面にさすがの俺も堪忍袋の緒が切れた。

「俺の非番をかえせぇぇぇぇぇ!!」

八つ当たりの対象を土方から銀髪に切り替え、俺は懐に忍ばせた拳銃の引き金を引いた。










「えーと、坂田銀時さん、志村新八さん、神楽さんであってますね?
早速ですが質問に答えて貰えますか?」

怒りが収まらないのでとりあえず釈放手続きはなかったことにして存分にいたぶることにした。
が、しかしそれは眼鏡の志村に阻まれた。

「いや何普通にはじめてんの?!さっきのことなかった感じになってるけど銃弾いたるところにめり込んでるんですけど?!」

「これ小説だから銃弾めり込んでるのはわかりませんよ。」

「まさかのメタ発言んんんん!!」

眼鏡は生粋のツッコミのようで俺の発言にいちいち突っ込みを入れてくる。
騒がしく突っ込む眼鏡を真ん中に、両サイドにやる気のなさそうな顔の銀髪に、なぜか黙って俺を見つめてくるチャイナ服の少女という配置。
いくつか基本情報を聞き出そうとするも、まじめに答えるのは眼鏡だけ。銀髪は一々口答えをしてくるしなんだか存在自体がうざったい。チャイナに至っては俺が来てから一言も言葉を発さずじっと俺のほうを見つめてくるだけだからやりにくい。いや、これもう睨んでるのか?
だけどまぁずっと気づかないふりをするもさすがに我慢できずにチャイナに視線を向ける。


「えっと・・・神楽さん?なにかいいたいことでも?」

黙り込んでいたチャイナを不審に思っていたのは俺だけじゃないらしく、残りの二人も視線を向ける。


チャイナ娘はしばらく口を閉ざしたままだったがやがて確かめるように俺の名前を呼んだ。

「李斗・・・・覚えてないアルか?」

「は?」

突然言われたその台詞は理解できないもので、思わず気の抜けた声をあげた。
そもそも名前をいった覚えはないのにそこからおかしい。
いや、名前の件は鈴木がいったのかもしれないけど。

「私神楽ヨ!昔一緒に遊んだよね?」

「・・・確かに俺の名前は李斗ですけど。人違いじゃないですか?」

他の二人も状況が分かっていないのか俺たちを交互に見るだけで呆然としている。
いくら記憶をたどっても目の前の人物と遊んだ記憶もなければあったことさえないはず。覚えている中で、の話だが。

「違うヨ!!ねぇホントに「知りません。俺はあなたと遊んだ記憶はありませんし会ったこともありません」」

俺の態度に顔をゆがめて悲しそうにするチャイナ娘から視線を外し、立ち上がる。
ほぼ初対面のこの少女の悲しそうな顔がなぜか心に突き刺さる。いきなりのことに混乱して頭が痛かった。

「嘘ヨ!絶対忘れないって、また遊ぼうって約束したアルヨ!!」

だから突き放すように、冷たく言い放つ。

「とにかく、釈放手続きはしておきましたから帰っていいですよ。」

背を向けて出口に向かう中で銀髪の「え?釈放?」という間抜けな声がしたが無視してドアを開けた。
出口の横に復活した山崎がいて俺と目を合わせると眉を八の字に下げた。
たぶん小言を言われるんだろうな。なんであんな冷たい言い方をしたんだとか。
その小言が吐き出される前に俺が口を開く。

「山崎、あの3人出口まで案内しとけ。」

「え?う、うん」

ろくに目も合わせないでさっさと出ていく俺に戸惑いながら返事をする山崎。
理由はわからないが、いまは一刻も早くあの少女から離れなければと思った。

同時に湧き上がる、思い出さなければいけないという思いにはふたをした。
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