君と見たい景色

□コロンブスの卵
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旧家の豊崎家にやって来ました。


「浜のトラブルシューターは二人組の探偵だとお聞きしたのですが…」

「色々ありましてね」


なぜこう言われているかと言うと、私が自分からただの付き人だって言ったから。
ナイスの場所は取りたくないし、逆もしかり…。

長い廊下を歩いていくと、一つの部屋に通された。


「こちらがその金庫です」

「中にはなにが?」

「それが…僕にも分からないんです。父は秘密主義だたもので…」

『おぉ、デカい…』


小さめの冷蔵庫サイズ。これ絶対高いだろ。


「旦那様は完璧主義で、とても厳格な方でした
坊ちゃまがこんなに立派になられたのも、旦那様の徹底した教育の賜物でしょう」

「よしてくれよ…」

「無理矢理開けられないのか?」

『無理無理
これ高い奴だよ、絶対。ロックはもちろん下手したら仕掛けがあるかも。』

「よくご存知で…正規の手順以外で開けようとすると、金庫内に火がつき、中身が焼却される仕組みになっているようです」

「たいした徹底ぶりだな」

『ねー
次は、旦那様のお部屋かな?』

「あぁ、そうだな」


お坊ちゃまに通された旦那様のお部屋は…とても綺麗!
部屋の壁一面にある本棚はきちんと整理されている。几帳面な性格なのだろう。


「徹底した綺麗好きだな…ん?」

『どしたの?…お』


綺麗に揃えてある本と本の間に違う種類の本がある。これは目立つ。
手掛かりになればいいんだけど。

本のタイトルは「I deal with sleep
walking disorder during sleep」


「レシオに聞くか
リリアはどうする」

『聞いとく』


本を開けて英文に目を通す。だって、タイトルからして如何にもって感じじゃん。
気になるよね。


「──もしもし。聞きたいことがあるんだが…」


すぐにムラサキはレシオに電話をした
長いけど、睡眠の持病についてだ。


《睡眠時遊行症。簡単に言ってしまえば夢遊病だ。
主な原因に上げられるのはストレスだな。普段抑圧している感情や行動が睡眠時と言う無意識下に表してしまうケースが多い。
例えばなんだが、誰にも言えない秘密を抱え込んでいるとする。
それを抱えることがストレスとしたら、睡眠時にそれを吐露することは十分ありえるな…ん》


レシオの声が途切れる
出たのはナイスだった

《ムラサキ、元気?》

「ナイスか。」

《俺達、二手に分かれるの失敗してたみてー》

「どうゆうことた?」

《2つじゃない。もとは一つの事件だった》

『…なーるほど』


ナイスがそう言うと、またレシオに変わった。


《おいムラサキ。リリアは今聞いているのか?》

「レシオか。聞いてるぞ」

《リリア。早く二万円返せよ》

『ゲッ…ごめん忘れてた…』

《やっぱりか…明日まで待つからな》


そう言って電話は切れた。


二万か〜
あれそんなにしたんだ…


「二万って…お前なに買わせたんだ?」

『なーいしょ』

「…さて、詳しく聞くぞ」

『了解』


私は、この事件についてを詳しくムラサキに話した。


そしてこの事を坊ちゃまに話すため金庫の部屋へ向かう。
察してくれたのか坊ちゃまはソファーに座った。


「まず、豊崎氏は大事な金庫のキーナンバーを誰にも言わず、自分の胸の内だけに隠していた
しかし彼はそれを内心ストレスに感じていた
豊崎氏は、その秘密を無意識下で暴露していた
寝言と言う形でな

そんな豊崎氏の体質を調べ上げた奴がいた」

『情報を売ったのは主治医だろーね。
“医者の風上にもおけんな”

…な、なんつって〜』


そう睨まないでほしい…


「…解除不可能と言う金庫の状態と、豊崎氏の体質を知った犯人は、ナンバーを知ってそうな奴を片っ端から誘拐した。
つまり、女子大生誘拐事件。

その被害者の女性は、全員豊崎氏と関係を結んでいたと言うことになりますね。

普通は寝言で呟いただけの数字と記号の羅列なんて覚えられるわけがない。
しかし、彼女は違った」

『その子は銀行に勤めてるんだけど、まだ日が浅かったんだろうね
寝言でも、数字を聞いたら癖とかで紙にメモしたんじゃないかな?』


そしてその女子大生は、ナイスが昼間に片付けた銀行強盗の被害者であり、バースデイとレシオに依頼した護衛対象の子だった。

すると、坊ちゃまは目を見開き頭に手を当ててよろめきながら立ち上がった。


「なんだよ父さん!僕にはさんざん厳しくして置いて、自分は女子大生と遊びまくってたのかよ!
全然知りたくなかったよ…父さんの性癖なんて!なにこの気持ち?
どうすればいいの?
この気持ち悪い感じ…」

「坊ちゃま、お気を確かに」

『二人とも、端に寄って!』


そう叫んだ時、勢いよくなにかが部屋に突っ込んできた。
え?コンクリ?


「…おいでなすっか」


私は坊ちゃまとメイドの人の前に立ち、ムラサキは外に出た。


「俺の力は重力のミニマム。
俺の触れたものは、俺の脳内では重さを失う」

「力仕事に向いてそうなミニマムだな
引っ越し屋のバイト紹介してやろうか?」

「お前かっこいいなぁー
むかつくなぁ!」


こいつか、依頼書にもかいてあったミニマムホルダーってのは。

あいつはそう言って、右手にはシーサー、左手には小便小僧の置物。

両腕を振り上げて、それらを勢いよくムラサキにめがけて飛ばす、が。


「…お前もか」


飛んできた置物はムラサキによって粉々に砕けてた。


『ムラサキのミニマム…オール・オア・ナッシング(俺達に明日はない)
相変わらずかっけーなー』


そう呟いた時、いきなり屋敷の向かいにある建物からまるで雷が直撃したかのような音が聞えてきた



『雷ってことはバースデイだね
レシオも暴れてんのかな?』


「…っう゛ー」


重量のミニマムホルダーさんは、風船ガムを膨らましたあと、かなりデカい銀色のトラックを持ち上げた。


おぉ…
頑張るのもいい事だけど…


「たまには後ろも振り返った方がいい」

「よっと」


後ろの壁を飛び越えて来たのはナイスだった。
奴はナイスとムラサキ間に挟まれ、トラックを持ち上げたまま2人を交互に見る。


「ん?ヘッドホンのガキに眼鏡の優男…そうか知ってるぞぉお前らのこと
二人組のミニマムホルダーの探偵だ。
はぁ!なんだ、同胞じゃねぇか」

「同胞?」


その言葉にナイスは顔をしかめた。
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