君と見たい景色
□黒いコスモス
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「怒られた」
ノーウェアにはカウンターにうつ伏せていたナイスとムラサキ、豆を手動でひいていたマスター、それからリリアとはじめちゃんがいる。
『珍しいね』
「温厚なアートが怒るなんざ、よっぽどのことをしたんだろうなぁ」
「なんもしてねぇよ
はじめちゃーん。俺、何もしてないよね?」
「あげる」
はじめちゃんはそう言って一切れステーキをフォークにさし、ナイスにあげた
「地べたを這いずり、時たま跳ね上がるのが精一杯のカエルは、軽々と大空を舞う鳥の姿を見てなにを思うか」
「なにそれ」
「空を舞う鳥に罪はない
だがその羽ばたきに切り裂かれてる奴もいるってことだ」
「そういうモテそうな言い方やめてさ、分かりやすく言ってくんね?」
『久しぶりに出たね、詩人モード』
「おい」
ごめんごめんっとリリアが謝ると同時に、ノーウェアの電話が鳴り響いた
「はい、こちらカフェノーウェア
えぇっ?あぁ、はい
ハマトラにお仕事ですよ!」
「ふぇー」
「御馳走様」
『いってらっしゃーい』
「いかねーのかよ」
『うん
アートんとこ行って機嫌取ってくる』
「うっ、よろしくー」
途中コンビニで買った差し入れを持って署に向かった。警察署内にある道場に行ったと耳に挟んだため、そこに赴くことにした
「はぁっ、はぁっ」
荒い息が続く中に、アートとスリーはいた
道場の床に2人して横になっているところをみると、終わったようだった
靴を脱いで中に入る
『お疲れ様』
「っリリア!」
「来ていたのか」
2人が着替え終わって、差し入れを渡す
アートもスリーも、それを善く受け取ってくれた
「どうしてここに?」
『なんか機嫌悪いって聞いたからさ
もう吹っ切れたようだけど』
「まぁね」
缶コーヒーを飲み干すと、アートは立ち上がった
「もう行くのか」
「はい」
*****
「まるで憑き物が落ちたみたいです
ありがとうございました、先生」
「気にするな
少し影響されただけだ」
そう言ってどこからか取り出したのは少女漫画
『え、それぇ?』
「なら、その漫画に感謝しておきます」
そう言ってアートは車に乗り込んだ
「当てはあるのか?」
「捜査は足で稼ぐ、基本に立ち返ってみますよ」
「アート、無茶はするなよ」
「はい、先生」
『アート
あんときの言葉、忘れないでよ?』
「あぁ」
どこに行くのか、アートは車を発進させた