君と見たい景色

□預言者の苦悩
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今日はとある墓地に来ています

手に持っているのはお花と音楽プレイヤー
私が初めて聞いて、初めて好きになった曲を流している

両手を合わせてから顔を上げると、後ろの木に目をつむって寄りかかり、その曲を聞いている人物がいた


『…バースデイ』

「よぉ、リリア」

『来てたんだ』

「まぁな
後で来ようと思ったんだけどよ、…その曲聞いたら離れらんなくなったわ」


バースデイは苦笑すると、お菓子の入った袋を置いて手を合わせた


『なーんか寂しぃや』

「あ?」

『嫌い…なんだよねぇ』

「…」


俯いて呟いた私に、バースデイはそっと頭に手を置いてくれた


『…あんがと!もういーから〜』

「無理すんなよ」

『へぃへぃ
って、バースデイはこれからなんか用あんの?』

「まぁ、あっけど
なに?まさかのデートのお誘い?」

『違うよ!レシオの病院行くんだけど着いて来る?』

「は?
いいけど…あん時の検査か?」

『まぁね
レシオは心配性だよねぇ』

「まだどっか悪ぃのかよ」

『いんや
心配してくれてありがとさん
問題はないよ〜』


墓地から出て、少し先を歩きながら鼻歌を歌っているリリアを見ながらバースデイは笑みを浮かべた

数十分歩いていると、レシオの経営している病院に着く
バースデイは受け付けへ行き、何かを話すと中へ入って行った

…もしかしてバースデイもなんか用あったのかな?
うちのせいで遅れた?
後で謝んなきゃねー

検査が終わると、私はかなり広い待合室に座り、壁に付いている大型のテレビに目を向けた


『ん〜ねむ…
ん?…可愛いな、この子…』

《前衛的なイラストで人気を博すイラストレーターのチユウさんと、ハリウッドで活躍するジョージ・メイキッド監督のコラボが、先日発表されました》

『へ〜、チユウちゃんか…
あ、バースデイ。終わったんだ』

「おう!」


バースデイは私の座っていたイスの隣に座り、一緒にテレビを見た

するとすぐに、中央階段の方からレシオが降りてきた


「ん〜あ〜幸せってねん」

『おつかり〜』

「足フェチにはまじで天国だよなー
ここは」

「病院は天国へ行かせないための施設なんだがな
診察は終わったのか」

「あぁ、変わりナッシング
良くも悪くもなってねーってさ」

「…そうか」


2人は会話を終えるとテレビに目を向けた


《チユウさんは共感覚をお持ちで、感情や気分を色で表現することで有名ですが、今日の気分を色で例えるなら何色ですか?》

《…空色》

「はっ!あいつも、随分変わったな
ビッグになっちゃって」

『知り合いなの?』

「まぁな」

『へ〜いいなー』


レシオとバースデイは、チユウちゃんと高校の同級生らしい

三人でテレビを見ていると、レシオの携帯に着信がきた


ここはあのチユウちゃんの事務所
コネコが、便利屋に仕事が来たってレシオに言ったんだけど、その依頼人がチユウちゃんのマネージャーさん
チユウちゃんが誘拐され、助けてほしいとのこと

私はチユウちゃんのファンに今なったので、無理矢理付いて来た


「犯人からの要求は、メイキッド監督とのコラボ映画の降板です
それを飲まなければチユウの命はないと…」

「んだよそれ!コラボが気に食ねぇから誘拐?ありえねぇだろ!」

「警察に連絡は?」

「実はチユウから頼まれてたんです。もし自分の身に何かあっても、警察には連絡しないでほしいと」


事務所の椅子に座るリリア達は、マネージャーの言葉に耳を傾ける
窓際にはインコが、籠の中から言葉を発しているが、今はそんなことを気にしてみればいる場合ではない


「どうゆう意味ですか?」

「おそらくチユウは、犯人に心当たりがあるのでしょう」

「は?」

「そして、その人間とのトラブルを警察沙汰にはしたくないと思っているのだと…」

「犯人を庇ってるっつーこと?」

「だからこそ、もしもの時はあなた方を頼るよう言われていたんです。
高校からの友人であり、信頼できるあなた方に」
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