君と見たい景色

□持つ者、持たざる者
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「青少年保護健全平等組合…ながっ!?」

『でもストレートで覚えやすいねー』


今日ハマトラ探偵事務所に来たのは、さっきの長ったらしい組合の偉いさん


「あなた方に依頼したい内容は、ファクルタース学園の調査です」

「「ん?」」


そう言うと、偉いさんは学園について話し始めた


「ファクルタース学園。全国各地からミニマムの素質を持つ子供を集め、能力を引き出すための養成学校。
訓練に耐え抜き、優秀なミニマムとして認められた者は学園のサポートの元、優良企業への就職や政府高官の去就を約束されている。
まさに成功へのチケット
ミニマムを持っている。たったそれだけのことで彼等は世間から優遇され、勝ち組として一生を送る」

「ずいぶんと詳しいんだな
ミニマムのことも、学園のことも
一般人には秘匿されてるはずだが…」

「うちの組合には議員や官僚も属しています。
そのくらいの情報は入手可能です」

「てかさ、そんなに詳しいんなら調べる必要なくね?」

『スクープとかでしょ?健全平等組合とか言ってんだからさー』

「…その通りです」

「なるほど、こんな組合の理事様が学園なことをよく思ってるわけないか…」


ムラサキが言うと、偉いさんは力を込めて言った


「だって不公平だと思いませんか?
ミニマムを持ってるだけで優遇されるなんて
それじゃあ持ってない子供はどうなるんですか?可哀想じゃありませんか!」

「可哀想ねぇ」


ナイスは興味のないような答えをする
というか興味ないと思う


「子供達はみな平等に評価される権利がある
能力のあるなしで将来を左右されるなんてあってはいけないことなんです

学園の創設には政府高官も関わっているので、存在を明るみにしようとしても圧力がかかってつぶされてしまう
だけど、大きなスキャンダルを暴くことができれば…」

「学園も潰せる、と…」


ムラサキは言葉を繋いだが、ナイスは興味のない話で欠伸をしている


「あなた達のことは調べました、ハマトラさん
ファクルタース学園出身でありながらその穏健を受けず、学園を嫌っている」

「別に嫌ってねーけど」

「もちろん報酬は弾むつもりです」


そう言うと、懐から100万と書いてある小切手を取り出した


「それは前金です
成功報酬てしてさらに三倍お支払いします」

「そん『そんなに!!』…おい」

「引き受けてくれますか?」

「悪ぃけど「『お引き受けします!』」…なにして」


私と声が被ったのがコネコ。
コネコは机に置かれた小切手を取ると言った


「お店のつけと場所代。どれだけ滞納してると思ってるんですか?」

『そーそー!それに、百万だよ!
やるっきゃないでしょ!』

「選択肢はないようだな」

「えー」


お偉いさん達が帰ったあと、私とムラサキはさっそく調査に出掛けた
今回ナイスは仕事をしないらしい
気が乗らないみたい

と言うわけで、学園の出身者アンド関係者の人達の所に片っ端から張り込みです!


「IMT通信会社の役員にしてファクルタースの常任。こいつも白か…」

『やっぱり難しいねー』

「はぁ、ギャラの取り分は考えさせてもらわないとな」

『うち六割貰う〜』

「却下だ」


ふざけあっていると、この周辺の広場からなにか聞こえた


『…なんか聞こえない?』

「お前だけだろ?」

『ちがう!なんか騒いでる』


すると、ムラサキの端末が震えた


「…あのお偉いさんからの電話だぞ」

『やっぱり』

「もしもし」

《ファクルタースの仕業よ!そうに決まってるわ!
違うとしてもこじつけてしまえばいい
異能力者を作っている気味の悪い学園だもの!
バケモノくらい作っていても可笑しくないわ!》


お偉いさんが力説しているうちに、私とムラサキは騒ぎのあった広場まで来ていた


「なるほど…スキャンダルがないなら作ってしまおうってか
…感心しないな」


広場の真ん中には、身長が2メートル以上もあり、体が紫色の巨漢がいた

そいつは近くにある標識を引っこ抜くと、ムラサキと私に目掛けて振り下ろしてきた


『うわぁ!』

「ふっ!」


ムラサキはミニマムで標識を受け止めそのままもぎ取る

2人の攻防が続く中、なぜかマンホールの突っ込んだ車の上にナイスがいた


「法廷速度は守れ!
…チッ。タフな野郎だ
おい!いるんなら手伝えよナイス!」

「んーー」

「なに考えてるんだ?」

「いや、なんかさ
のびのびしてんなぁーって」

『…』


広場の向こう側からはパトカーのサイレンが鳴り、何台かの車が止まった

すると、お偉いさんは叫んだ


「なにやってるの!?警察に渡しちゃだめ!
そいつを捕まえなさい!」

「はぁ?」

「ファクルタースの悪事を証明してやるのよ!
そのバケモノの体で!」


そう叫ぶお偉いに気付いた巨漢は、ゆっくりと振り向きお偉いのところまで歩いていった


『うそっ!ちょっと待ってよ!』

「リリア!」

『なに!?早くしないと…え?』


ミニマムを発動しようとする前にナイスに呼び止められた

あの巨漢は、お偉いさんの前で跪いて確かにこう言った



「───おかぁ、サン」
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