幻想水滸伝

星の後には彼女の手
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それでも、たまにこうして寒い夜の中、外に出たくなる。外に出ると言っても、塔の最上階の出窓から屋根上に上りそこに腰掛け、空を見上げるくらいのものであるが。



夜の空は、冬の季節では好きな方であった。空気は冷たいが、澄み切っている。その澄み切った空気によって、見上げる空には瞬く星々がよく見えた。



『死んだ人は星になって、皆を見守っている』

この塔に来て間もない頃、まだ何も知らない彼が初めて手に取った本に書いていた言葉である。子供向けの本ではあったが、当時の彼に取っては『死』という言葉の意味も存在も分からなかった。それが読めていたのかすらも定かではない。

だが、その言葉の意味をはっきりと理解できる今では、それが悲しい言葉だと知っていた。そしてその悲しい言葉すらも、彼には無意味なものだという事も。


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