幻想水滸伝

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下を覗けば、揺らめく水面。上を見上げれば、青く広がる空。前を向けば、風にたなびく草木。
湖上に位置するこの城の最上階、そのさらに上に足を進めると見る事が出来るこの景色は、戦場に身を置く者達の疲れた心を癒そうと常にそこにあり続けた。

戦の中で目に映るのは、自らの手に染まりゆく血と、それを纏った人間と人間"だった"もの、そしてそれら全てを焼き尽くさんとする炎。戦が終わっても、残る記憶は鮮明な赤だけで彩られていた。


心を癒す、といっても、それはただ真っ赤に染まった記憶を他色で彩る為だけの行為である。これによって本当に心が癒され、ましてや、戦で生まれた悲しみや苦しみが和らぐなど有り得はしない。再び戦が始まれば、他色で彩った上から簡単に赤が上塗される。
なんと意味のない行為だろうか。


しかし人々はそれを無駄な行為だと知りつつも、赤で埋められた自身の心を僅かな一時でも彩りたいと、ここへ足を運ぶ。
それは、この城を本拠とする解放軍を率いる彼とて例外ではなかった。

主に人気のない夜、時折部屋を抜け出しては、見張りの目をかい潜ってこの屋上へ来る。
夜に見える景色は、朝昼のように鮮やかな色ではない。空も、湖の水面も、草木も、朝や昼に見るような色彩はなく、どれも夜闇に包まれ青黒としている。
だが、それでも彼には十分であった。

―蛇の道は蛇。死神の道は…死神―

それが彼の信条であり、また、彼をしばる柵であった。
自らを闇に生きる死神となし、そして自らを闇に包む。
そんな彼は、鮮やかな朝昼の景色を望もうとはせず、自分に、死神に相応しい、暗く黒い景色に身を置いた。

―何色だっていいさ。赤色よりは、ずっとマシだ―

半ば諦めるよう、そして自らに言い聞かすよう、心の中で反芻する。

―暗い色だっていいさ。血の色よりは、ずっとマシだ―



―これが、僕の色だ―






.fin

2009.4.6


意味不明な文ですね;
自分でも意味が分かりません(笑)

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