snow snow snow
□04:初等部B組
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「蛍…」
蜜柑が不安そうに蛍を呼んだけど
蛍は背を向けて座ったまま何も言わない
「アリスって証拠が見せられないんじゃ、違うって認めたも同然よ。早くここから出て行きなさいよ。ずうずうしい」
「っ…」
ぺしっ
『み〜かんッ』
「汐衣…」
『だーいじょうぶ!蛍はそんなこと思わないよ』
「せやかて…」
『ほーら』
「いだだだだだだづねらんどいでやああぁ」
涙目でほっぺをさする蜜柑に、にかっと笑う汐衣
「ちょっと!あなたたちきいてるの!?」
パーマを一瞥し、小さく息をついて立ち上がる
『撤回して』
「え?」
『撤回してよ。いまの言葉』
「なッ…!」
ザワ…
『いいじゃない。私も蜜柑も、鳴海先生にアリスだと言われてここまで来たんだから。少なくとも、先生のことあんたたちよりは信用してるし』
「何、根拠もなしに勝手なこと…」
『あんたたちこそなんの根拠があって、アリスが普通の人よりも格上なんて思ってるの?』
汐衣の強い口調に、思わず押し黙るスミレ
『…もしあんた達が人より上のもの持ってるんだったら』
汐衣はスミレ達の方をキッとにらんで
『そのアホ以下の根性ぐらいじゃない?』
教室のざわめきが大きくなる
「おい白い方の転入生がキレたぞ」
「なにを…」
「てめぇ…言わせておけば…!」
『そーやってなんでもかんでもアリスアリス!アリスじゃない一般の人たちがだた働いてるだけの駒って、よくそんなことが言えるよ!寄生虫?ふざけないで!!』
その様子を、ただ黙って見ている棗
『アリスの能力がすごいってことは否定しない。でも、一般の人たちの事をそんな風に言うなんて、あたしは許さない!撤回して!!』
「な、なんですってー!!」
「てめえ…調子にのりやがってッ」
『!』
とりまきの男の子の1人が汐衣につかみかかり、取っ組み合いのケンカになった
「なにするんやッ汐衣離せバカーッ!」
「じゃますんな!」
「わっ」
『!!っこの!』
ブワッッ!!!
「うわぁぁ!?」
「「「「!!!??」」」」
止めようとした蜜柑が殴られそうになった瞬間、蜜柑と汐衣の周りを小さな吹雪がガードするように包み込み、その反動で男の子は跳ね返され尻もちをついた
「な、なんやこれ!?」
「!及川さんあなたまさか!」
『1個言い忘れてた』
そう言って静かに吹雪をおさめる
『あたしのアリスは、氷のアリス』
「…」
「棗…あいつって…」
「すっごーい汐衣!メッチャかっこええで!!」
『へへ、すごいだろ…』
「?どしたん」
「てめぇ!ちょーしのんな!!」
念力によってサッカーボールが汐衣の後頭部めがけて飛んできた
「汐衣あぶない!」
『え』
間に合わな…
ドンッ
バカンッ
『ッ…』
「…悪いけど、このバカ共いじめていいのあたしだけだから。勝手に手出ししないで」
「『蛍…ッ』」
「い、今井さん!?」
「汐衣手震えてるわよ。こーゆうの苦手なくせに、強がってんじゃないわよ。相変わらずバカね」
『ご、ごめん、だって…』
そう言いながら汐衣は気が抜けたのかその場にへなへなと座り込んだ
「わかってるわよ。はぁ…まったく、これで優等生賞がパァだわ。蜜柑、どーせ言いだしっぺはあんたなんだから、帰れなくなった事ウチの両親に謝っといてよね。まぁでもあんたたちが自分から会いに来るなんて、まったくの計算外が起こったワケだし、今回はそれで特別チャラにしといたげる」
蛍の言葉に汐衣と蜜柑は顔を見合わせ、二人で思いっきり蛍に抱きついた
『蛍ううううー!!』
「ただし、お食事券は別で払ってもらうわよ」
「もうなんでもええよー!!」
『蛍大好きー!!』
そんな光景をとりあえず見ているしかなかったクラス一同
「〜ッ棗君!流袈君!なんとかして〜ッ」
「……」
(ん?)
フイ
あれ…
いま棗って人 こっち見てた気がしたけど
…気のせいかな?
「…おい水玉。そこの雪玉はともかく、お前らこのクラスになじめなかったら入学できないんだってな」
「う…」
『雪玉いうな』
「まぁこのままじゃ確実にムリだな」
確かに…思わず信じるだのなんだの勢いで言っちゃったけど、蜜柑は今どんなアリスなのか、私もわかってないんだった
このままじゃ仲良くなろうにも、まずアリスって認めてもらわないと…
「…チャンスやらなくもないけど」
「えっ」
「あそこに見える北の森。あの森ぬけて高等部に足跡のこしてきたら、仲間だって認めてやるよ」
回り始めた運命の歯車は
「どーする?やんのか?」
知らず知らずに
他の歯車も巻き込んで
「…やるっ」
止まることなく 回る廻る
「交渉成立 ゲームの始まりだ」
ぐるぐると、ぐるぐると
to be continued…