闇の皇太子
□生まれ変わっても
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后視点。
今日はあいにくだが天気が悪い。外では雨が降り続いている。店に入ってくるお客さんも濡れている人が多い。濡れたお客さんが入ってくるのをぼーっとレジから見ていると、また1人今度は高校生くらいの男の人がずぶ濡れで入ってきた。
「い、いらっしゃいませ。」
どうにもあいさつは苦手で声が小さくなってしまう。そのあいさつに気付いた様子もなくその人はうつむいたまま商品を選んでいる。
(全身びしょ濡れだなあ、、、。)
そんなことを思っているとその人がレジに来ていた。商品をひとつひとつ会計していく。ふと、その人の顔をちらっとみると。
(泣いてる、、、?)
雨に濡れているからか、それともうつむいているからか気付かなかったが、その人は泣いていた。そして顔をしっかり見たとき、なんともいえないような感情にとらわれた。今初めて会ったはずなのにどこか懐かしく、胸の奥がきゅーっとなったような。そんなその人を見ているとどうしても何かしてあげたくなってしまったのだ。そっと自分のポケットからハンカチを取り出すとその人に差し出した。
「あ、あの。これよかったら使ってください。何があったのかはわからないんですけど、元気、出してくださいね?」
笑顔をつくり一生懸命言う。伝わるといいのだが。
「あ、見ず知らずの人にこんなこといわれてもこまりますよね!すいません、、、。」
その人は、はっと顔をあげてやっと俺の顔を見る。すると急に涙は止まり驚いたような顔になった。
「こ、后、、、?」
「え?な、なんで俺の名前、、、?」
急に名前を呼ばれて驚いてしまう。そして、その人の目からはまた涙がこぼれた。
「ご、ごめんなさい!もしかして、俺何か悪いことでもしましたか!?ど、どうしよう、、、。」
自分のせいかと焦ってしまう。でもその人は涙をふき笑顔になった。
「ごめん!急に驚かせちまって。ハンカチありがとう。ちゃんと洗濯して返すから!」
その人はそう言い、商品をもって今度は顔をあげ胸を張って雨の中に消えていった。
「嵐のような人だなあ、、、。」
俺はレジで呆然とするしかなかった。
(でも、ハンカチ返してくれるって言ってたし。また、会えるかな。)
そう思うとなぜか心が弾み、頬が緩んだ。
「また、会えるの楽しみだな。」
二人の物語がまた始まった気がした。