闇の皇太子
□不滅の。
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世の中はゴールデンウィークだってゆうのに、闇世界の公務は途絶えないしオモテの大学の研究もありなかなか休めない日が続いた。一言でいえば忙しい、だから俺は忘れていた。このゴールデンウィークになにがあるのかなんて。
「ただいま。」
オモテの破と住んでいる家に帰る。今日もやることがたくさんで忙しかった。僕が帰るといつもはこの時間にはとうていいるはずのない破が出迎えてくれる。
「おかえりなさい、華。」
「破、今日は仕事ないの?」
「はい、今日はもともとお休みをもらってあったんです。」
破が自分から休みをもらうことはめずらしい。今日はなにかあるのだろうか。
「今日なんかあるの?」
そういうと破はきょとんとした顔になる。そのあと、少しクスッと笑って僕に問いかける。
「今日は何日ですか?」
「今日は5月4日だけど、、、?」
そこまで言ってやっと気づく。そうか、今日は。
「僕の誕生日?」
「そうです。おめでとうございます、華。」
だからなんだというのだろう。それだけで仕事を休んだのだろうか、、、。だとすると少し申し訳ない。
「そんな顔しないでください。休ませてしまって申し訳ないと顔に書いてありますよ。」
「顔に、じゃなくてまた心読んだんでしょ、、、。」
「すいません。でも、本当に申し訳ないとかは思わないでください。」
破は気を抜くとすぐ僕の心を覗いてくる。まあ、破に聞かれて困ることはないんだけど。
「でも、たかが僕の誕生日だよ?」
「たかが、じゃないですよ。華が生まれた大事な日です。お祝いしましょう。」
そういい、リビングに行くと破が作ったであろう料理やケーキが並んでいた。それを破と一緒に食べる。
「そういえば、こうやって破と誕生日祝うのも何回目だろうね。」
「物心ついたときにはもう祝い始めてましたから、たぶんその時からは全部お祝いしてるんじゃないですかねえ。」
ということは、僕の誕生日はほとんど破と過ごしていることになるらしい。
「私が今日、休んでまで華とお祝いしたかった理由。分かりました?」
破に急に問いかけられて考えてみる。でもいくら考えてもよくわからない。
「分からないって顔してますね。」
「うん。」
「華の誕生日は毎年きちんと一緒に祝いたいからですよ。」
目を合わせてにっこり微笑みながら言う破に、自分の顔が赤くなるのを感じる。なぜこんなことをさらっと言えるのだろう。
「あ、ありがとね、、、。」
「まだその言葉は早いですよ。
「え?」
「プレゼントです。」
そういい破が出してきたのは、一輪の紫色のチューリップ。
「紫のチューリップの花言葉はたしか、、、不滅の愛?」
自分で言って、一気に恥ずかしさがこみ上げてくる。つい、机に突っ伏してしまう。
「はい。これからも華の誕生日は全部祝いますという意味を込めて。」
「よく、こんなクサいことできるねえ。」
「そうですか?」
「うん、でもありがとうね。」
お礼はちゃんと顔あげて言う。きっと今の僕の顔は真っ赤で滑稽だっただろう。
「いえ、綺麗ですよ。華はいつでも。」
「だから、読むなって、、、。」
僕は一生この男にかなうことも、愛からにげることもできないだろう。そんな環境になれてしまった。