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□幸せな時間
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「ショウ、これから食事に行こう」
なんて、唐突に言うもんだから、へ?と変な声がでた。
俺の予定を知ってか知らずか…藍の事だから多分前者か。まあ、断る必要もないから、二つ返事で答えた。
「…って、めっちゃ高級料理店じゃねーか!」
「そうだけど。なに?」
「俺、こんな格好だけど」
てっきり、ちょっとおしゃれなレストランとかかと思って、スーツは来てこなかった。ジャケットは羽織っているけどしっかりしたやつではない。
「その服でも十分おしゃれだし問題ないよ。それに個室だから。…顔赤いけど大丈夫?」
こいつは、無意識に甘い声で褒めてきたりするもんだから顔にでてしまった。
慌て、大丈夫だと言って2人で店に入った。
内装もやっぱり豪華でなのに落ち着いた雰囲気がある。が、今の俺には落ち着く訳もない。
何を考えてるんだ、藍のやつ。
席について暫くすると料理が運ばれてきた。
「おぉ〜すげー旨そう」
「そう?ならよかった」
そういって藍が微笑みかける。
そんな嬉しそうな顔しやがって。俺だって…。
「あ、そういえば、なんでいきなり食事に行こうなんて言ったんだ?」
「今日が夫婦の日だからだよ」
「あ〜なるほど…って夫婦!?」
「そうだよ。お出かけしたり、食事したりするんでしょ?」
「それは、ひとそれぞれ…いやいや、そんなことより夫婦って!!」
藍は何てことないような顔でこっちを見てる。
「じゃあ、これで了承してくれる?」
そう言うと席を立って俺の目の前にきて、左手に指輪をはめた。それは、すごくぴったりで流石だとしかいえない。
「ちゃんと式はあげられないし、届けも出せないけど僕はずっとショウといたい。だから、形だけでも、ね?」
あ、ヤバい。そう思ったときにはもう、涙が溢れてきた。
仕方ないね。と優しく涙を拭き抱きしめてくれる。余計に止まらなくなる。
でも、これだけは言わなくちゃいけない。
「お、おれ…っ俺も一緒にいたい!」
そしたら、さっきよりも強い力で抱きしめてきた。
「ありがとう。…ほら、泣き止んで。料理食べよう?」
頷くことが精一杯で何度も頷いた。
幸せな時間
今日はきっと人生で一番幸せな日になった。
-end-
「やっぱり料理上手い」
「じゃあ、毎年来る?」
「まじか!?」