12/31の日記

19:04
イチルキ小話:「好機」
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年始は、どこに行っても人で溢れかえっている。初詣や初売り、外に出たら静かで人の少ないところなんてほぼないだろう。

それでも外に出た。ルキアのお願い、となると断ることが出来ないのは、もはやどうしようもない。



「オイ、離れるなよ!ぜーったい離れんな…!」


「うむ…い、いちごっ」


「うお…!っと!!この人混みぎゅーぎゅー状態なんとかならねぇのかよ!?ルキア、手!」


人混みの中で離れないために、その手を掴めば、それはいくぶん冷たかった。


(…あとでコイツに手袋買ってやろう)


密かにそう思ったことは、ルキアには内緒だ。


そんなことを考えていたら、珍しくルキアが眉間に皺をよせているのが目にはいった。オレみたいだな、と思っていると、その小さな口が開く。



「ぬー。一護…足が痛い」


「足?足って…この状態じゃ身動きとれねぇし…。どうすっか…。なぁルキア、足痛いって靴ずれか?それとも長時間立ってるから足が疲れて痛むのか?」


「いや、踏まれておる」


「え!?」


そこで、下を見ると―、



「…ふ、踏まれてるな…しかもオレに…。わりぃ!よ、よし、これで大丈夫、だよな…?」


俺は、ルキアの爪先を踏んでいた足を退かして、ルキアの機嫌を窺うべく、その様子を見た。
ところが、ルキアは怒るでもなく、機嫌を直すでもなく、俺にある要求をしたのだ。


「一護、腕を開けろ。そして、肩幅に足を開け」


「は?な、なんで?」


「いいから、早くせぬか。……うむ、よし。これで大丈夫だ。あたたかいし、足も踏まれずにいるし、寄りかかることもできる。何より一護にすっぽりと覆われているから、もう心配事はないぞ」


そう言って、俺の胸に身体を預けるルキアは、本当にこっちが困るくらいかわいかった。


「いや、そ、そうかもしんねぇけど、この人ゴミの中でこの体勢って、ちょっと、いやかなり…恥ずかしいだろ。つーか、今日のルキアは、甘えたMAXだな。自分からオレに抱きついてくるなんて」


「嫌なのか?ならば、しかたない…。迷惑をかけたな」


そう言って、身体を離そうとしたルキアに思わず自身の身体が動いた。


「い、嫌じゃない!嫌じゃないから」


俺は、ルキアが自分から離れることを止めるべく、今まで以上に強くルキアを抱きしめてしまっている。恥ずかしいなんて気持ち、この時にはすでに飛んでいた。


しかし―、



「ふふふ。…撮れたか、小島」


(なっ!)


ルキアの言葉に、周囲を見渡せば、よく見知った顔が笑顔で携帯を握っていた。いつから見てたんだ!?つうか、撮られたのか!??と狼狽える俺に対し、ルキアは、実に楽しそうに笑う。とても満足気だ。

いつもいつもルキアに振り回される俺だが、それは今年も変わらないらしい。俺は、少しばかりの仕返しにルキアの頬をつねって、水色から写メのデータを奪うべく、その手を伸ばした。



(終)


〈あとがき〉

皆さん、こんにちはー。
もしくは、こんばんは!

久遠華月です。

ええと、このイチルキ小話は、アンソロ主催の天麻さんと私の二人で書きました。
ちょうど一昨日、天麻さんと一緒に冬コミに行っておりまして。ビックサイトの外で待っている時間、天麻さんと二人で書いたのです。


華月:「テーマ、何にします?」

天麻さん:「じゃあ、人ごみで」

というところから、イチルキ会話文を書き始めました。ちなみに、出だしの一護を私が書いたので、以下ずっと一護を華月が、ルキアを天麻さんが書いています。

冬コミ後、喫茶店で話をしていた時に、私が「これをアンソロ用サイトの日々にアップしてもいいですかね?」と天麻さんにきいて、許可をもらったので、こうしてお話をアップ出来ているわけです。天麻さん、有難うございます!

当初、二人で書いていた時は、一護とルキアの会話文のみでしたが、地の文章があった方がより情景がわかりやすいかと思い、天麻さんに「私、これに地の文章を書き加えていいですか?」ときいて、こちらもOKをもらったので、私の方で少し加筆しています。

あとがきも天麻さんから任せていただいたので、今回私が書かせていただいているしだいです。

この小話がどのようにして出来たのか、ちょっと裏話(笑)?を語ってみましたが、訪問者の皆さん、イチルキ小話、楽しんでいただけたでしょうか?

そして、アンソロ執筆者の皆様がこれに便乗してくれたりしないかな…?とちょっと期待してみる私。

ただ、私も含め皆さん原稿執筆中だから、多忙真っ最中かと思います。
なので、これ以降、ここの「日々」にイチルキ小話がアップされるかは、わかりません。

でも、たまにはこういうのもいいですよね!

最後になりましたが、タイトルの「好機」は、天麻さんがつけてくださいました。
私は、タイトルセンスが全くないので、喫茶店ですぐタイトルをつけてくださった天麻さんを見て(さすが!)と思いましたよ。


それでは、今日はこの辺で。
久遠華月でした!

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☆コメント☆
[rei-u] 01-07 16:00 削除
さすがのお二人!待ち時間も無駄にならない、ホント、イチルキって良いですねえ(違)
ラストはまさかのルキアも仕掛け人!?こいつは一本取られたなあ。
それにしても一護うらやましい、私もルキアさんをはさみry

[天麻凪] 01-07 23:03 削除
rei-uさんへ
ふふふ〜、そんなことないのですよ。
イチルキがすごいのですよ(笑)。
仕掛け人なんです。
新商品のチャッピーと白玉の誘惑に負けてしまったルキアさんなのですという設定があったり。
ええ、一護さんがうらやましすぎます。
ルキアさんを後ろからぎゅーできるだなんて!!

[久遠華月] 01-07 23:59 削除
rei-uさんへ

こんばんは。
コメントくださり、有難うございます!
待ち時間も有効活用してみました(笑)
ラスト、私も天麻さんからノートを渡された時にrei-uさんと同じことを思ったのですよ。えぇ!?ってびっくり。予想の斜め上で返されて、一護も同じように驚きです(笑)

そして、ルキアをぎゅー出来るのは一護の特権ですよね。イチルキは沢山いちゃいちゃしているといいと思います!

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07:57
今年も最後です。
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おはようございます、天麻です。

今年も今日で終わりです。

来年はいよいよ初の大阪です。
そしてアンソロ!

イチルキが大好きな文字読みさんにお届けできるよう全力で進めていきますので、よろしくお願いします。


ではでは、よいお年を。

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