NOVEL(FFW)
□永遠の命
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「戻られて何よりです。団長」
竜騎士団の副団長はバロンに戻ったカインに敬礼した。普段は世界中を回っているカインが議会に参加するため一時バロンに滞在することになっていた。
「いつも任せてすまないな」
カインにそう言われて誇らしかった。副団長はカインの不在中はバロンの安全を任されていた。
広場では怪我をして暴れる火竜を手当てしようと四人がかりで押さえようとしていた。その様子を見てカインは広場に進み出た。竜はカインを見てぴたりと動きを止めた。カインが癒しの魔法を施して竜は大人しくなった。
「ありがとうございます。団長」
団長は白魔法まで使えるのかと新入りの竜騎士は驚いた。
「保護数は増えているようだな」
カインは火竜を撫でながら呟いた。人間に危害を加えるため処分された竜も増えていた。竜騎士団員は危険も多いが団員は必要性もあり増加していた。
副団長はカインの身につける竜騎士団の紋章を見た。光と闇の竜が戦いあって環になる紋章だった。永遠の命を表していると団長から聞いたことがあった。永遠の命など絵空事のように思っていたが、カインを見ていると本当にそんなこともあるのではないかと思いたくなる。全く姿の変わらない彼を見て、竜の化身ではないかとの噂もあった。竜の生気の影響で竜騎士は長命の者も多かったが、カインには特別なものを皆感じていた。研究員や魔道士達が究極の目的として永遠の命を探求していると聞くが、カインならその方法を得たのかもしれないとすら思えた。
「聞きたいことがあるのだが、一年ほど前に行方知れずになった竜騎士はいるか?」
副団長はカインに尋ねられた。
「はい、無断で飛竜を連れ出したものがおりました。腕は確かな者でしたが。残念なことです。」
「飛竜を操れるなら相当の手練れだったのだろうな」
竜騎士団でも飛竜を乗りこなせるのは上位の者だった。
「その騎士の名前や出自は分かるだろうか?調べたいことがある」
「分かりました。」
カインは新入団員達に挨拶と講義をするために講堂に戻り始めた。
途中で閉鎖されたバロン城のバルコニーを見上げながら、夕方そこに久しぶりに上がってみようと思った。