Purple road―紫色の堕天使達―

□第28話 切り裂き葉月
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真「奈津美が!?相手は確かに美崎だったんすか?」

夕「白い学ランだから、確かに……茶髪のリーゼントとパンチの2人組だヨ!」


さっそく夕美は真田のもとに走った。運良くそこには、燎と並んで歩く真田がいた。

事の顛末を話すと真田は激昴し、もう一度聞き直す。それを黙って聞いている燎だったが、静かに歩き出した。


夕「燎ちゃん?」

燎「俺が元だからよ……ケリつけなきゃな。廃工場根城にしてんのはわかってる。永次ぃ…」

真「な、なんすか?」

燎「巻き込んで悪かった。奈津美ちゃん、死んでも取り返すからよ。」


燎は静かに、それだけを伝えると再び歩き出した。慌てて後を追う真田と夕美だったが、すでに燎はいなかった。

懐から愛用していたドスを取り出すと、一旦抜いて刃を確かめる。再び鞘に納めるとそれをゆっくり懐に差し込んだ。意を決したようにゆっくりと愛車に跨ると、2〜3発吹かして廃工場に向かう。

一方その頃、夏目は廃工場に来ていた。理由は簡単、郷田たちに呼び出されたからである。


夏「………やりやがったな、てめぇら。」

甲「これでちぃとは動く気になったかな?」

誠「あんたに助け舟出したんだぜ。感謝して……っ!」



拉致られた奈津美を見るなり、夏目は怒りの表情を浮かべた。それに対しての誠の一言が、夏目の怒りを頂点にさせた。生意気な口を叩いた誠に、夏目は鉄拳をくわえる。その後、縛られた奈津美のもとにいくと、ゆっくりと縄を解いて話を続けた。


夏「てめぇらの甘さにはつくづく呆れたよ…奈津美ちゃん、怖かったろうな…もういいから、帰んな。」


夏目のその行動に、誰一人咎める者はいなかった。否、咎められるものではなかったのだ。

ちょうど奈津美が解放されたところで、倉庫に爆音が鳴り響く。その音は夏目がよく知る男のものだった。


奈「燎先輩…」

燎「…すまん。」


奈津美と燎の間に交わされた言葉はたったそれだけ。次に燎はジッと夏目を睨みつける。それは、他ならぬ憎悪。対する夏目も悲しげに睨み返す。2人の友情があったからこその、防げなかった悲しい喧嘩。夏目は舌打ちをすると背を向けた。

それは、親友同士の宣戦布告が開始された瞬間でもあった。振り返ることの無い夏目に、燎はなにも言わずに背を向けて、奈津美をタンデムに乗せて走り去った。

やがて奈津美を真田のもとへ届けると、再び愛車を走らせて立ち去ってしまった燎を見ながら、真田は呟いた。


真「俺も行きますからね、燎先輩。」

奈「永次先輩……」

真「心配すんな、あの人に危ない橋、渡らせねえからよ。」


不穏な空気を振り払うように、真田は奈津美の頭を撫でて無理に笑って見せた。


奈「……バカ。」
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