Purple road―紫色の堕天使達―
□第26話 気まぐれ野郎転入録
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陽「あんな奴ウチにいたか?」
新「いや…見ねぇツラだ。」
裏門から侵入したその男は、気だるげにカバンを拾いあげ、口笛を吹きながら小脇に抱える。
陽次と同じような長さのリーゼントではあるが、色は金髪に黒メッシュ、短ランにボンタンといった出で立ちまで陽次にそっくりである。違いがあるならば2つ、1つは髪色、そして2つ目は陽次のパーマに対して、その男は直毛であるということ。
辺りをキョロキョロと見渡し、こちらに向かって歩いてくるのを確認すると、陽次と辰也は静かに立ち上がった。
?「〜♪」
陽「……」
新「……」
陽次たちの睨みも何処吹く風か、金髪のソイツは口笛を吹きながら通過しようとした。あまりのことに青筋を浮かべて、陽次が声をかけようとした時にソイツは急に止まった。
?「……タバコ忘れた。ったくツイてねえなァ。赤髪の兄ちゃんたち、タバコ持ってねぇ?」
ソイツはボソッと一言放つと、陽次たちの方に向き直り、ニコッと笑いながら訊ねた。
陽「は?…あ、ああ…ハイライトで良ければ…」
辰「馬鹿かてめぇっ…!なに押し負けてんだよ…」
陽「だってよ…」
思いのほか気さくな態度を示した相手に、戸惑いながらも愛用のタバコを差し出した陽次に、辰也は盛大にズッコケる。コソコソと話す陽次たちに構わず、ソイツはタバコを1本受け取り、火をつける。
?「ハイライトか、いいセンスじゃん?マヌケだよなァ、ライターだけ持ってきてやんの。サンキュー、2枚目なお二人さん。」
辰「なぁ、あんた何もんよ?ウチの生徒かよ?」
?「そーだよ?西高のモンだよ。」
陽「こ、この野郎…妙に調子が狂うやつだぜ…」
タバコに火をつけ、後ろ手を振りながら立ち去ろうとしたソイツに、辰也は訊ねた。またも飄々とした態度で話すソイツに、陽次は何故か苛立ちを覚える。
辰「日頃の陽ちゃんを見てるみたいだべ?同族嫌悪はやめとけよ。」
陽「ほっとけ!」
?「ん?あんたもしかして、一色陽次?」
陽「あ?だったらなんだってんだよ!いちいち拍子抜けする野郎だなてめぇ!」
?「そうすっとそっちの黒髪は新開辰也だべ?転入初日に有名人に会えるなんてよォ。」
ケタケタと笑いながらマイペースに話すソイツに、段々と陽次達は青筋を浮かべ始める。先に限界を迎えたのは辰也であった。
辰「ヘラヘラしてんじゃねえよ、なあ?」
陽「辰也、やめっ!」
辰「!?」
辰也が殴りかかると、ソイツは片手で拳を受け止め、ギュッと握り込む。ミシミシと辰也の拳が音を立てる中、ソイツは真面目な態度で告げる。
?「俺はあんたらと喧嘩する気はねぇの。どうしてもやるっつうなら、俺も本気にならなきゃいけないんだよねェ…転校生相手に無様な喧嘩、する?」
言葉こそ穏やかだが、眼光から繰り出される圧力はものすごく、ついには辰也が膝をついてしまった。陽次は慌てたようにソイツに言った。
陽「もういいだろ、こっちが悪かったよ!だからもう行け!」
?「そう?意外と現実がわかってるみたいネ、おたく…タバコサンキューなァ。」
陽「名前なんつうんだ、てめぇ…」
燎「葉月燎。覚えなくていいぜ、めんどくせえから。」
燎なる男は、名乗るだけ名乗ると職員室に向かって歩いていった。