Purple road―紫色の堕天使達―

□第23話 麗羅二代目回想録[後編]
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葛「なんだぁ?MARIAに襲撃されたァ?」

陽「俺ら2人で走ってたら、いきなり…」

新「まあそんなバカに捕まるほどトロ臭くねえっすけど…念の為に。」


集会の翌日、葛西は帰り際にそんな話を耳にした。あれから麗羅には生え抜きが2人加入した。まだ中学生だが、その2人は麗羅にとって大事な逸材となるに違いない。後の3代目、一色陽次と新開辰也である。そんな2人の話を聞くと、葛西はケタケタと笑いながら言った。


葛「八尋のバカに奇襲かける度胸なんてありゃしねぇよ。ま、お前らも見かけたら遊んでやれや。」



それからさらに1週間、葛西による厳戒態勢の中、美雪はいつものように集会帰りに葛西の後ろに乗って帰路についていた。爆音が轟く中、美雪は背中に抱きついて呟いた。


美「ねえ、クニアキくん…」

葛「あー?なにー?」

美「クニアキくんは、死んじゃったりしないよね…?」

葛「なんてー?」

美「……なんでもない!もっと飛ばしてって言ったの!!」

葛「ダメだよ、これ以上はアブねぇって!」


不安な思いを葛西にぶつける美雪であったが、その悲しい思いは爆音に掻き消された。笑いながら言う美雪の訴えに、葛西は苦笑いを浮かべて答えた。美雪を家に送り届けると、葛西は美雪に言った。


葛「…なあ、俺らそろそろ同棲すっか?」

美「え…?」

葛「……あー!なんでもねえよ!…また明日な。」


葛西の照れ隠しにクスッと美雪は笑い、葛西のもとに歩み寄る。そしてジッと顔を見ると、頬にキスを落とした。咄嗟のことに葛西は固まり、それを見て美雪はまた笑った。


美「今のが答え。またね!」


それだけ伝えると、美雪は背を向けて歩いていった。ようやく気を取り戻した葛西は、頬を染めて愛車を2〜3発吹かし、走り去った。

葛西と別れて数分の事だった。美雪は家路につくべく歩いていたが、あと少しで家という所で声をかけられた。


京「美雪ィ……」

美「京介先輩!?…ひどい怪我…どうしたんですか!」

京「わりぃ……MARIAにやられちまった……」

美「京介先輩?……京介先輩!京介先輩!!」



そこには血だらけになった京介の姿があった。美雪の問いかけに息も絶え絶えになりながら、やっとのことで答えると気を失ってしまった。美雪の付き添いの元、救急搬送されるのに時間はかからなかった。

数時間前に別れた葛西と出会うのは、病院でのこととなった。


葛「…………」

陽「八尋のバカタレが……」

新「……まさか、このまま済ますんじゃないっすよね?葛西先輩…」


葛西は面会謝絶となった病室前の廊下で、腕を組みながら下を向いて黙っていた。そこには陽次達もかけつけており、陽次は壁を殴って憎悪を込めた言葉を吐いた。さすがの新開もアタマに来ているのか、今回ばかりは殺気立たせている。


美「あたしがもっと早くに帰ってたら……」

葛「…お前はなんも悪くねえよ。むしろお前のおかげでアイツ助かったんだし。ありがとうな?」


美雪は俯きながら自分を責めるが、葛西が穏やかな声で頭を撫でながらなだめる。そこで口を開いたのは、陽次だった。
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