Purple road―紫色の堕天使達―

□第20話 中坊日記5
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夏「何度言ったら理解すんだよ?いくら上下関係気にしねえからってなァ、仮にも先輩後輩だべ?」

「いいじゃんかよ、なっちゃん!それより早くいこーぜ!やばいって!」


夏目が可愛がっている後輩とじゃれ合いながら登校する風景。それは微笑ましい光景。しかし、その安寧は長くは続かなかった。後輩が何者かにぶつかった事により事態は急変したのだ。


「いてっ……どこみてんだコラァ!………あっ……」

?「ぶつかってきて威勢いいじゃねぇか、おう?兄ちゃん……」

夏「や、やっちゃんざんす……」


後輩がぶつかった相手、それはいかにも極道風な男であった。白いスーツを肩から羽織り、中には黒い開襟シャツ、開いた首元からは刺青がチラリ。

まずい相手にぶつかった。夏目は顔を引き攣らせているが、相手は話を進めたのだった。


佐「お前ら中坊か?"極政組"の佐川っちゅうもんじゃァ…ガキ共が、誰にぶつかったかわかってんのか?」

「極政組って………」


極政組…美崎を束ねる極道組織で、その悪名たるや尋常なものではなかった。ボケていた夏目だったが、すぐに意識を取り戻し、すごい早さで頭を下げた。


夏「すいません!こいつバカでどうしようもねぇんです!本当、ゴメンなさい!」

佐「へっ、兄ちゃん見た目だけか?情けねえなァ、女みてぇなツラしてよ?」

「あっ……やべ……」

佐「なんだ?そもそもそんな頭して不良の真似事かァ?情けねえなぁ、オイ……なっ!」


禁断の一言に後輩がしまったという表情をする。それに気づかず佐川という男は夏目を馬鹿にした。再び夏目に振り向いた時だった。


夏「だれが女だって?」

「っ、コノヤロー、極政組だぞ、わぁってんのかガキ!」

夏「だったらなんじゃい!こっちは北陽一家じゃアホんだらァァ!」



先程のような謙る様子は一切無く、バチバチに佐川を締め上げる夏目。後輩は苦笑いを浮かべながら眺めるばかり、そんな騒ぎがおさまったのは、佐川が完全に気を失ってからのことだった。


「…なっちゃん、やっちまいましたね…」

夏「あ?なにが?」

「極政組ったら悪名高い極道っすよ…」

夏「……まあ、なるようになるだろ?」

「先輩がやったんですから、オレは無関係で…」


後輩がやたらと敬語をつかうことに違和感を覚えつつ、持ち前の豪胆な性格でなんとか笑気を保つ夏目。しかしどうしても我慢ならなくなったのか、夏目は後輩に訊ねた。


夏「やたらと敬語じゃねえか…お前さては全部俺にかぶせて飛ぶ気だな?」

「…………なんのことでせう。」

夏「文でしかわからねえような"しょう"の旧表記…小説だからってあからさまにボロ出しやがって!お前も絶対道ずれにしてやるからなァ!」

「やったのはあんたじゃねえか!無関係無関係!俺すっげー無関係!やったのは夏目でーす!北陽中学3年の夏目弘人でーす!!」

夏「あっ!汚ねえぞ!卑怯だぞてめぇ!」


後輩の思惑を知るや否や、メタな発言をして肩を組み、逃がすまいと詰め寄る夏目。その手をそっと戻し、夏目の名前を叫びながら逃げる後輩。慌てたように夏目も逃げ出す。その光景を佐川はしっかりと見ていた。


佐「夏目ぇ……名前覚えたからなァ……」
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