Purple road―紫色の堕天使達―
□第14話 西湘バイトウォーズ
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陽次の何気ない一言に、脱け殻だった夏目が息を吹き返す。復活するなり髪が逆立つ勢いで陽次に逆上すると、周りはいよいよダメだとため息を吐く。
夏「だいたいテメーは金なんざねぇだろうが!散財野郎が偉そうに言うなァ!!」
陽「……俺の手に持つ札を数えてみなァ。」
夏「万札が1、2……なっ、5万だァ!?陽次テメー、ついにカツアゲなんぞしやがったな!」
陽次の手にある5万を見るなり、夏目は驚愕する。たちまち悔しくなったのか言いがかりをつける。それでも尚、陽次は余裕の表情を浮かべて夏目に言い放った。
陽「むしゃくしゃしてパチンコやってみたらよォ、これがもう大当り。海岸通りにある店の角から二番目、アタリ台ひいちまったんだわ……お前ら貧乏人とは格が違いますよ、はは、ははははは!」
夏「…………バイトだ。」
陽次の憎たらしい高笑いを間近で聞いた夏目。さすがに自分がみじめに思えてきたのか、プルプルと震えながら決断をくだす。
陽「は?」
夏「バイトしてやるんだよ!…たかだか5万で図のぼせやがって、今に見とけ……絶対屈服させてやる……今に見とけよ……」
勢いよく宣言すると、ぶつぶつと言いながら夏目は出ていってしまった。その異様な光景を目の当たりにした葛西は呆れたように皿を磨いており、金次はケタケタと笑っている。銀次は思わず陽次に詰め寄った。
銀「どうすんだよ!夏目が恐い奴になっちまったじゃねえか!」
陽「……あの野郎、八つ当たりなんかしやがって……あいつより上だと証明してやるからな。見とけよ、絶対に邪魔してやる……」
ところが、陽次も八つ当たりされたことに腹を立ててぶつくさと言いながら出ていってしまう。小さな器の二人の小さな喧嘩が知らぬ内に始まってしまったのだ。
残された者たちは唖然としており、流川が冷静にツッコむ。
流「……あいつら、銭の亡者だな……」
町に繰り出した夏目は早速バイトを見つけていた。美崎駅前にあるハンバーガー屋であった。面接をうけ採用されて、益々勢いがついた夏目は、そそくさとカツラを買いに出ていたのだ。
夏「パチンコか酒の王冠売るしか出来ねぇ陽次には、絶対出来ねぇ芸当だ。今に見とけよ、“赤髪ピエロ”が…!」
一方その頃、陽次は陽次でなにやら仕事をしていた。それは夏目の予想の斜め上をいく仕事である。
陽「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、各種漫画、本の叩き売り!旧作から新作まで取り揃えてるよ!今なら5セットで5000円!!」
どこから集めたのか大量の本や漫画を売りさばいていたのだ。ただしこの本や漫画には裏表紙に謎のはんこうが押されている。
そのはんこうは「県立西湘高等学校」。そう、彼は学校の図書館から本を持ち出していたのだ。
陽「見とけよ、金髪貧乏が……」