Purple road―紫色の堕天使達―

□第13話 退けない意地
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西「オラオラァ!かかってこいよ新開!!」

新「クソだらァァ!!」


埠頭で繰り広げられている西と新開のタイマンは、思わぬ光景が広がっていた。新開が西に圧されているのである。

序盤こそは新開が圧倒的な強さを見せていたが、西の顔面に拳が当たってから流れが変わったのだ。


西「てめぇ……人の顔面キズモノにしやがってコラァ…」

新「傷ついて困るツラァ…してんのかよ?」

西「殺してやる…」



西の一言に皮肉で返す新開、西に殴られても倒れず反撃の拳を振るうが、その度にキレた西の鋭利な一撃が顔に当たっている。

さすがの新開も肩で息をするほど、西の一撃は鋭くなっていった。

それでも尚倒れない新開に、西は底知れぬ恐怖を感じていた。


西「(これだけ殴っても倒れねえ…なんなんだよこいつァ!?)くそがぁ、死ねコラァ!!!」


底知れぬ恐怖と不安から、徐々に大振りになっていく西の攻撃。自棄を起こして大振りな拳を振るった西だったが、その拳は新開の手のひらで防がれる。そして新開はボソッと呟いた。


新「……そういう非情な喧嘩が好きならそう言えよ…俺ァそっちのほうが大好きなんだからよォ。」

西「ひっ!」


その一言に西の顔が絶望に染まる。ニタァと笑いながら新開は、西を掴んだまま目潰しをしたのだ。思わぬ攻撃に悲鳴をあげる西、しかし新開はさらなる追い討ちをかける。


新「よーしよしよし…寝るンじゃねえぞ?」

西「っアァ!!!」


続けざまに髪を掴み、顔面に拳を何発もいれる。いつしか見せた時のように、新開は完全にキレてしまったのだ。沸点が高い穏健派な新開が、眠れる獅子が目覚めた瞬間だった。


「頭にのってんじゃねェ!」


さすがに危険と思った兵隊が、新開の頭に鉄パイプをぶち当てた。西を殴り続けていた新開だったが、ピタリと手を止めて、ゆっくりと振り向く。西を地面に捨てると、殴った兵隊目掛けて歩いていく新開。

その恐ろしさに兵隊が後ずさるが、逃がす新開ではなく、首もとを掴みニタァっと笑った。


新「パイプ寄越せ…」

「なにいって……渡すわけねえだろ!」

新「いいから寄越せェ!!!」


抵抗する兵隊に有無も言わせず鉄パイプをとりあげると、なんと新開は兵隊の頭をフルスイングしたではないか。兵隊が血を散らしながら倒れたのを確認し、再び西を見据える新開。

その場に居たものは皆、恐怖で足がすくみ逃げ出せずにいた。しかし西はなんとか逃げようと地を這っていた。彼にとって三羽ガラスの地位はもはやどうでもよく、生きながらえることに執着をする状態にまで落ちぶれていたのだ。

そんな西を逃がすでもなく、パイプを引きずって詰め寄る新開。地に伏せた西を足蹴りし、踏みつけてはまた蹴飛ばし、徹底的に屈辱を味会わせる。


新「だれが寝ていいつったァ?誰がくたばっていいつったァ!?」

西(こ、殺されるっ…!怖ぇ、こいつ狂ってやがる!)

新「わかってんのかよ、わかってんのかよォ!ナメやがって…おー、コラァ!!」


一切の容赦なく鉄パイプを浴びせ続ける新開。やがて西は完全に気を失い、新開が攻撃をやめた頃には、兵隊が逃げ出しており、埠頭にはグチャグチャになった西と新開だけになっていた。

タバコを取りだし、火をつけて一服しながら、新開は呟いた。


新「負けんじゃねえぞォ、金次、銀次…」
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