Purple road―紫色の堕天使達―
□第12話 血染めの看板
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陽「……妙だ、いつもならこの時間でも、この通りは賑やかなのによ。人っ子一人いねぇ。」
新開たちが埠頭にて宣戦布告した頃、陽次はちょうど京浜道路に入った所だった。やけに静まったその場所の異変に、陽次は怪訝そうな顔をする。さすがにおかしいと単車を停めて辺りを見回すが、人がまったくいない。
なにかがおかしい。そう感じたその時だった。
我「会いたかったぜェ?一色ィ…」
声が聴こえた方向に振り向くと、ツルハシを携えた我妻の姿があった。路地裏を見ると、ぐしゃぐしゃになったチンピラが数名が転がっていた。携えたツルハシからは血が滴っており、路地裏から通りに続く道には、ツルハシを引きずったであろう、血の一本線が伸びていた。
陽「…てめぇが京狂連の悪魔か。」
我「あんまり遅ぇからよ、そこら辺にいる小僧と遊んじまったわ…でもなァ?全然“愉しく”ねぇんだよ…すぐに動かなくなっちまってさァ?」
心から楽しそうに笑う我妻。その姿はまるで、無邪気な子供のようである。きっとその姿を見たものは、誰もが言うであろう。
血に染まったツルハシを携えたその姿はまるで…
−死神−だと。
陽「てめぇが真田を拐ったんか。それだけじゃねえ、夏目を嵌めてムショ送りにした…腹ァくくってんだろうな?」
我「いいねェ、その殺意を剥き出しにした目、その表情…俺ァよ、俺以上に狂った奴を見ると興奮するんだよ…」
陽「へェ、そりゃ上等…生憎と俺はてめぇみたいな狂った野郎をイジめて、豚みてぇに転がる姿を見るのが最高に気持ちよくて興奮するんだよ…」
我妻の狂った発言に動じず、むしろその挑発に挑発で返す余裕をみせる陽次。満足気に笑う我妻。二人がゆっくりと対峙する。
我「それだけ上等こかれちゃったらよォ、気持ちよくてイっちまいそうだぜ?」
陽「能書きはいいから始めようぜ…もう我慢できねぇよ。」
ゆっくりと互いに間を詰めていく。そして双方駆け出した。向かう相手は互いにただひとつ。陽次にむけてツルハシを振りかぶる我妻。対する陽次はそれを避ける際、確実な拳を我妻の腹にいれた。
我「っ…!……はは、ハハハハハ!!」
その拳を受けて、愉しそうに笑う我妻。ツルハシを不規則に振り回すが、ことごとく避ける陽次。しかし、我妻は楽しみながらも冷静に動きを見ており、不意をついて陽次の顔面にツルハシを振るった。
なんとかギリギリで避けた陽次だったが、一瞬反応が遅れたために右瞼に傷を負ってしまった。
瞬く間に右目が血に染まり、ドクドクと血が流れる。
陽「っ……フフ……ハハハ、ハハハハハ!!」
その傷もなんのその、我妻のように笑い声をあげて、目標物に向けて無慈悲な拳を振るう。