Purple road―紫色の堕天使達―
□第12話 血染めの看板
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23時、京浜埠頭。埠頭には京狂連の兵隊で溢れていた。しかしその中に我妻の姿がない。
「しかしよォ、本当に俺らで抑えられるのかよ?」
「我妻さんの予想は外れた事がねえんだ。それに新開と一条兄弟あわせて三人、こっちは何倍も数がいるんだ、気合いいれて守るしかねえ。万が一やられても、京狂連三羽ガラスが指揮とってンだし、負けはしねえよ。」
「“西”さんも、“中岡”さんも、“蜂谷”さんも我妻さんに負けねえ実力者だろ?それぞれのチームが連合の主要だし、西連のイモには負けねえよ。」
我妻の読みはあたっていた。新開という男は、土壇場で何をするかわからない怖さがある。最初から易々と陽次に来させる訳がないことを。この予想から、埠頭には囮として三人の猛者に指揮を取らせ、関心の我妻は一人、陽次をマークしていたのだ。
兵隊が各々話す中、極めて目立つ三人の男が互いにタバコをつけあい、睨みを効かせていた。
?「で、西連の田舎者は何人で攻めてくるんだ?」
?「斥候からの話じゃ、麗羅の新開と狂死蝶の一条兄弟の三人だとよ。」
?「ちったァ強ぇのか、そいつら?」
一番最初に口を開いたのは、京狂連三羽ガラスの一人である西。京狂連の中でも主力チームの一つである、“Crezy Cats”の頭である。
その問いに答えたのは中岡。三羽ガラスの一人で、“妖鬼妃”の頭である。
そして、忘れてはならないのは三羽ガラスの中でも、頭一つ抜き出た腕をもつ“舞風”の蜂谷。この三人は連合入りの前から兄弟の盃をかわしており、結束力も並のものではない。
中「ナメてかかるなよ。あいつら強豪並みいる西湘でトップクラスに強いからな。」
西「新開っていやぁ一色の影に霞んでっけどよ、実は一色よりも強いって話だぜ?キレたら止まらねえ奴だってよ。俺ァ、新開とタイマン張りてえなあ。」
そんな話も束の間、けたたましい爆音が埠頭に響いた。その瞬間に兵隊が叫ぶと、瞬く間に戦闘体制に入った。
「西連だァ!!」
たった三人の特攻。その三人相手に死ぬ気で迎え撃つ京浜軍団。その様をみて、三羽のカラスが凶悪な笑みを浮かべる。次第に近づく爆音、その3台はやがて兵隊たちの前で停まる。
対峙する三人と多数。兵隊の一人が怒鳴り付けた。
「一色だけで来るんじゃなかったんか!」
銀「じゃかあしい木っ端軍団がァ!!」
金「遊んでやっからよ、かかってこんかい!」
その怒鳴り声に応ずるように、笑みを浮かべながら挑発する一条兄弟。一斉に沸き立つ怒声を心地良さそうに、新開はニカっと笑い、堂々と言い放った。
新「ウチの真田、凶の夏目…見事なまでに嵌めてくれたよなァ。ただよ、さすがに俺でも許せねえ事がある…詫びの一つもなしに、ウチの大将狙ったことだ。お礼にてめぇら、仲良く皆殺しにしてやるよ…!」
笑みを浮かべていた新開の表情が、徐々に引き締まっていく。言い終える頃には、並みならぬ殺気を宿していた。最後に飛びっきりの宣戦布告をする新開、それを皮切りに戦争がはじまった。