Purple road―紫色の堕天使達―
□第11話 京狂連
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真田拉致の翌日。この日は夏目率いる凶の集会の日だった。統一された白い特攻服の背中には、凶の字が大々的に綴られている。そのなかでも一際目立つのは、なんといっても夏目である。いつもはおろしている髪を上に持ち上げ、リーゼント風にしている。そこにねじり鉢巻、特攻服には赤い襷を巻いている。滅多にお目にかかれない集会スタイルである。
夏「これから美崎から西湘まわって流すけどよォ、噂じゃ麗羅の真田が拐われたとか出回ってンけどよォ、てめぇらビビって走んなよ!!」
「「「押忍!」」」
夏「だいたい京狂連のボンクラが西連相手に出来るわけねえんだ!流してぶつかった京狂連はみんなブっ叩けぇ!マッポ来ても逃げんじゃねぇぞォ!わかったらエンジンかけろォ!!」
夏目の声が響き渡ると、一斉に爆音が轟く。順次コールを切りながら、走り出す。単車にはそれぞれバットや木刀が携えられている。2ケツをする者の手にはキラリと光る日本刀があった。一頻りの号令をかけた後に夏目は愛車に跨がり、これまた耳をつんざくような直管の音を響かせる。武装した凶悪な群れが、一路西湘を目指す。
やがて美崎から西湘へ続く国道は、凶で埋め尽くされる。道幅いっぱいに広がる単車、華麗にローリングをする者。不規則に爆音を轟かせ、タコ踊りをする者。その中心に夏目はいた。夏目独特のコールを響かせて、愛車を操るその姿は、まさに凶の看板そのものだった。
そうして流しているうちに、抗争の火種とかちあった。前方からヘッドライトの大群が押し寄せてきているのがわかる。やがてその二つの群れは対峙した。
夏「京狂連のバカが、死にに来やがって…」
我「おめえ凶の夏目だろ、手間とらせやがって。」
夏「真田拐ったのテメーらか?」
我「独りぼっちで可哀想だからよ、テメーも拉致りにきたぜ……」
挨拶がてらに殺気をあらわにし、アタマ同士が睨みあう。夏目の問いに我妻は平然と話す。その一言を皮切りに、兵隊が夏目へと詰め寄った時だった。
夏「喧嘩すんのに油断……」
「ひっ!?」
夏「してんじゃねえよォ!?」
詰め寄った兵隊を、軽く捻り潰した夏目。小競り合いが抗争に変わった瞬間だった。双軍共に一斉にぶつかる。
我「てめぇら一歩も退くなァ!夏目の首あげてこい!」
夏「殺しても構わねえ!ブッ叩けェ!」
怒号が飛び交うなか、優勢なのは凶だった。京狂連とて修羅場潜りで弱いわけではない。だが、凶はそれを凌駕していたのだ。
そのチームは、西湘で最も過激で、最も凶悪な暴力軍団である。
その噂以上に、兵隊の一人一人に気迫が満ち溢れていた。この勢いに京狂連は戦意を失いつつあった。