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□第十三話 お土産物は通販で
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その日、鈴はえらくそわそわしていた
部屋中をウロウロしては、しきりに時計とドアの方を見ている
ピンポーン
『キタアアア!!!』
ダダダダダ
ものすごい早さでドアに駆け寄り勢いよく開けると、宅配の兄ちゃんがぐぇっと蛙の潰れるような声を出した
顔にヒットしたらしく無駄に時間をかけてキメたであろう髪がボサボサになっている
『あっら!やだぁ!私ったらごめんなさいね〜。一昨日から届くのが楽しみすぎて夜も眠れず朝ご飯ものどを通らなくて仕事にも身が入らず上司に叱られるなんて事になっちゃうのかな〜と思ったんだけどそんなことは無くて、
夜はぐっすり朝はわざわざホットケーキ焼いちゃったし、仕事はいつも通り客来なくてやる事ねえからお通ちゃんの【お前の母ちゃん何人だ!】ずっと全力で歌ってたのに店長は注意するどころかドラムセット取り出してノリノリで結構な腕披露するからちょっとしたライブ会場みたいになって、結果として見物客としてお客さんが例にも無くいっぱい来て繁盛したわよ!』
「…えっと……
そりゃ、良かったですね」
『ありがとう!!おかげさまでな!』
引きつる兄ちゃんの手をとってブンブン揺らして握手をする
代引きだったので、ずっと握りしめて体温と同じ温度になった小銭と札を渡して、震える手で荷物を受け取った
『あぁ、待ちわびたぞ愛しい君…
どうぞ中へ、君の為に部屋中掃除して要らない物捨てて、ガラにもなくポトフとかロールキャベツとか作ってみたりベランダの室外機掃除して裸電球をLEDに変えたのですよ?』
荷物を優しく撫でながら微笑む目の前の怪しい女から、宅配の兄ちゃんは足早に逃げていった