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□第一話 雑誌のあの開運グッズってぶっちゃけどうなの?
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ある秋の早朝


一人の女子高生が駅に向かって歩いていた


『ああー、めっちゃ眠いわーやっぱり夜中までパソ子とランデブーはダメだったわ』



目のしたのクマをこすりながらあくびをかみ殺して歩く彼女は本作の主人公である
ニコ動巡り、YouTube巡りで彼女の睡眠時間が大幅に削られたのはいうまでもない
 

『あ、そういや今日ってジャンプ発売日じゃね?駅前のファ○マで銀魂立ち読みして行こーっと』


彼女の今のマイブームは銀魂。
銀行の銀という漢字に反応してしまうほど心酔しきっている



『はっ!ダメよ!ダメダメ!私主人公なんだからしょっぱなからこんな調子じゃ先が思いやられるわ!はじめくらいはしっかりしなきゃ、ファイトー鈴!』


コホン


ー皆さんこんにちは!私の名前は御山 鈴ピッチピチの高校二年生!好きなジャンプ作品は「ちょっと、そこのお嬢さん」


呼ばれて振り向くと、くたびれたスーツ姿で瓶底メガネのお爺さんがいた。
どことなく武蔵っぽい気もするが知らない人だ


(ん?せっかく人が張り切って自己紹介してんのになんだよ爺さん我主人公ぞ?)


お爺さんは鈴と目を合わせるとにっこりと笑って口をひらいた



「お嬢さんや、現実は好きかね?」


『いきなりな質問ですな
現実なんてそんな残酷なもん好きなわけ無いでしょ』


あきれ気味にそうかえすとお爺さんはメガネを光らせて近寄ってきた


「そんなお嬢さんにはコレ、
幸運のブレスレットじゃ2個セットで934円、しかも今ならなんとこのポーチもプレゼントお買い得じゃぞぉ?」


『いや、さっきの質問と全然リンクしてねぇし開運グッズ高校生に売りつけるとかどゆことよ爺さん!私金欠なうだから!学校行くから!サヨナラッ!』


あまり関わらないほうが良さそうだったので早口にそうかえすと駅前までの道をまた歩き出した

(一体なんだったのあのジジイ
あんなんじゃ買う気に毛ほどもならんよ
可哀想にあの仕事は長く続かんだろなぁ向いてないよ、ウン)
 


『月曜の朝から変な人に会っちゃったよーもう、どうせなら銀さんに会いたいよ銀さん連れてこいよコンニャロー』



予想外の出来事に悪態をつきながらあるいているとふと見上げた景色がぼやけているのに気づいた。
雨など降っていないはずなのに薄く霧がはっている。視界に影響が出るわけではないが、電車通学の鈴にとっては天候の変化は気にしなければならないことなのだ。


『まあ、どちらかというと早い方だしちょっとくらい遅れても間に合うでしょ』
 


ゴホンッ

ー改めてましてこんにちは!あ、おはようのほうが良かったかな?
皆のアイドル鈴だよ!
現役高校二年で好きなジャンプアニメは「ねぇお姉ちゃん」


またも途中で入ってきた声に仕方なく振り向くと可愛らしい女の子がいた。7歳くらいだろうか


(お?今度は三つ編み幼女か?
癒されるなぁオイ…)


鈴は女の子と目線をあわせ精一杯の笑顔と優しい声をつくって話しかけた


『どうしたの?自己紹介の途中だったんだけどお姉ちゃんに何か用かな?』


最初は、緊張している様だったが、鈴の言葉を聞くと勢いよく顔を上げる


「あのね、ポチを助けてほしいの!」


『ポチ?ペット?』

「うん、散歩してたらねひとりで走っていっちゃって木にのぼったら降りられなくなっちゃったの」


『あらま、そりゃ困ったわね
大丈夫よ!私木登りと鉄棒なら誰にも負けない自信あるから!サルゲッチュ御山と呼ばれた女だから』


「ほんと!?こっちだよ!来て!!」


嬉しそうに鈴の手を引っ張り出した女の子につられて走っていくと大きなイチョウの木が見えた


「ポチーー!お姉ちゃんが助けてくれるって!まっててね!」


イチョウの木を見上げた鈴は口をあけて固まった


『………?』


「お姉ちゃんどうしたの?」


『ポチってアレ?』


「うんポチだよ?」


『え、だってあれ、え?ポチ?』








「おおー!さっきのお嬢さんか!よくワシの名前を知っとったのう」


木の上のポチが元気よく手をふって話しかけてくる。


『ちょっ!ちょっとまってよ!あれがポチぃ??嘘つけよ!』


「そうだよ?ポチだよ?ポチはポチ以外のなにものでもないよ?」


「ワシは生まれた時からポチじゃ!ポチったらポチじゃああああああ!!!!」


『お前はさっきのインチキセールスジジイだろがあああ!!何?
今までの数分で幼女のペットになって散歩させられてたわけ?しかも木に登って降りれないだあ?どゆことおおおお!!!』


「失礼な!降りられるぞい!」


ジジイは軽やかに飛び降りるとドヤと言わんばかりに鈴を見る


『降りられるなら最初からそうしろよ!私いらねぇじゃねぇかうぜえええええ!』


「ポチ!降りられたんだね!ありがとうお姉ちゃん!」


『いや、私何もしてないよ?あのジジイが勝手に登って勝手に降りただけだよ?』


「やったねポチ!じゃあ私お家帰るね!バイバーイ!!」


『ええ!?帰っちゃうの!ポチは!?』

「まあまあお嬢さん落ち着きなされや」


『ご主人様行っちまったぞ爺さん。いいのか追いかけなくて』


爺さんは女の子が走っていった先を見るとああ、と一言呟いて向き直った


「あの子はトイレの場所を教えてくれたんでな、ついでに散歩しとったんじゃ」


『うん、そうだったんだ、へぇ』
なんかもう面倒くせぇよ
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