銀高

□化物恋愛事情
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「おい、銀時」


ガンッと足元の棺を蹴る紫の狼人間。

ビリビリのボロボロの薄い上着を緩く来て、ぴちっとした黒ズボンを履いて…頭には耳、尻には尻尾を生やし、手足は本物の狼。

首には包帯が何重にも巻かれ、それは彼が蹴った棺の中に鎖と共に伸びている。
どうやら、包帯の下に首輪をつけているようだ。


「おい、起きろっつってんだよっ」


なんの変化もない棺を痺れを切らしてガンガン蹴る狼男。


ギッ−


「っ……」


「やっと起きたか、天パ」


ゆっくりと棺を開け中から出てきたのは、全身包帯でグルグル巻きになった男。
個性的な銀髪に、その手には狼男の首から伸びる鎖が握られている。
狼男の首に巻かれている包帯はこの包帯男−銀時の一部らしい。


「…天パ言うなよ……チビウルフ」


「死ね」


「残念、俺はもう死んでますぅ…」


言い合いを始める二人…二匹?


銀時の声には覇気がない。
目の下にクマがあって、肌は死人のよう…本当に彼は死んでいるようだ。


「今日も待っててくれたんだね、晋助…」


ゆらりと立ち上がり、鎖を引いて狼男−晋助を抱き寄せる銀時。


「っ…ったりめぇだ。こいつのせいで何処にも行けやしねぇよ」


自分の首から伸びる鎖と包帯を指で弄る。


「嘘つき…狼の晋ちゃんならこんなの簡単に引きちぎれるでしょ?」


「……どうしてだろうな、引きちぎれねぇんだ」


鎖と包帯から手を離して銀時の背中に腕を回す晋助。
彼の言葉を聞いて堪らないというようにきつく抱きしめ、首に顔を埋めて匂いを堪能する。


「可愛いなぁ、晋助は…とことん俺を惚れさせてくれんのね……」


「んっ…知るか……てめぇが勝手に惚れてんだろうが…」


「最初に惚れたのは晋助だろ…?」




何十年も何百年も前、まだ銀時が生きていた頃。
飢えた狼が彼の村を襲った。

それが、狼男になったばかりの晋助だ。
少し前まで人間だった彼は人間を狩ることに躊躇していた。

だが飢えには勝つ事ができず、村人たちを夜な夜な襲った。

そしてある日、愛する人たちを喰われた村人たちの罠で彼は重症を負った。
彼は逃げた。
そして行き着いたのが、銀時の家だった。

晋助は銀時を喰おうとした。
けど、できなかった。
綺麗な銀髪に魅せられて。

銀時は晋助を匿った。が、村人たちに見つかってしまい、銀時は彼らに殺されてしまった。

はずだった。

何故か銀時は蘇り、再び晋助の前に姿を表したのだ。



「あの時の晋ちゃんの表情といったらもう…」


「だっ、黙れっ!!//」


「はいはい…」


クスクスと笑う銀時。


「まぁでも、惚れたのは同時だったかもな…俺も、晋助がボロボロで家に来た時ドキッとしたもんね……魅力的でさ、出血とか大量にしてたけど、なんかそれも妖艶で…」


「やめろ、変態…」


だんだんと晋助の顔が引きつっていく。


「まとめて言えばあれだ、俺が守ってやんなきゃって思ったんだよ…」


「今も昔も俺の方が強ぇだろうが…」


「じゃあ…俺がこいつの傍に居てやる?」


「じゃあってなんだよ。俺が無理矢理お前の傍に居させられてんじゃねぇかよ」


「だって、晋ちゃん俺が寝てる間にふらふらどっか行っちゃうでしょ…?そんな、晋ちゃんのことで俺が知らない事あるのなんて嫌だし、晋ちゃん可愛いから変な虫がついちゃいそうで……」


「んな虫喰ってやらぁ」


「ダーメ…そんなばっちいもの食べちゃいけません。晋ちゃんは黙って俺にだけ食われてなさい」


「っ、てめぇは…」


「あっ、やっぱ黙っちゃダメ。可愛い声でいっぱい喘いでね?」


先程までの死人面とは打って変わって活き活きとした表情をする銀時。


「ざけんなよ…腰痛くて動けなくなるだろうが……」


「動く必要ねぇだろ?ここには誰も来ねぇし、何処にも行かせねぇし?」


「……てめぇの腰の骨ぇ砕いてやろうか?」


「砕ける程突いて欲しいわけね、了解」


「…………」




包帯グルグル巻きの変態ゾンビと
猫のような外見の少し可哀相な狼男の
彼らだけの特別な世界。

もう邪魔者はいないよ。




たぶん。



fin,
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