捧頂
□たまには
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夫婦になって、今まで知らなかったかごめのことを知る機会も増えた。
その一つに挙げられるのが、酔ったときどうなるかということ。
旅をしていたとき、一回酒気にあてられ何か叫び出したことはあったが、それはまだ初期段階だったらしい。
飲みすぎると……そうちょうど今のように
「いぬやしゃ〜、わらしね〜うふふ、すきだよ〜えへ、いっちゃった♪」
どうもいつも以上に愛情表現が豊かになるらしい。
猫のようにすりより俺の首に下がった念珠をいじっている表情は正直たまらない。
まず酒のせいで顔は火照り、何度直しても暑いからといってはだける胸元。
そして呂律が回ってないふにゃふにゃした言葉づかいも可愛いと思ってしまうのは、骨抜きにされているからなのか。
正直にいうと、このまま少し濡れた柔らかい唇に吸い付いてそのまま……といきたいところだが、たちが悪くかごめは酔ったときの出来事を覚えていないことが多い。
あの行為はお互いの気持ちが重なって初めて気持ちよくなると俺は思っている。少しクサイ気もするが。
だから俺だけ覚えていても意味がないし、何より襲っているのと変わらない気がするのだ。
(それはそれで燃えると想ってしまうのは男の性だということにしとこう。)
ようするに、俺は今
理性と本能の絹糸のように細い狭間に立たされているのだ。
「いぬやしゃは〜?すき〜?わらしのこと〜?」
そして始まる好きか攻撃。
あ、頭動かさないでくれ、当たるだろ。
「すきなら、口づけ……しよ?」
俺も簡単なやつだと思う。
その一言で無意識に噛みついてたんだから。
甘い酒の匂いと、かごめ自身の甘い匂いに酔いながら口づけを繰り返し、そろそろ本気でやばいと思ったところで銀糸を引きながら離れると、幸せそうな顔をしたかごめがいた。
かごめに酒を飲ますのはなるだけ控えようと思ってはいるが、たまにはこんなのもありだとも思うのだった。