黒子のバスケ

□Please call by a name.
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ある日の放課後。
部活も終わり、門の前まで火神と一緒に歩いていたが人影を見つけた。
「なぁ、黒子。あれ黄瀬じゃね?」
「多分…というか絶対にそうですね」
「じゃあ俺帰るわ。どうせお前ら一緒に帰るんだろ?」
「まぁ、何か用があって来たんだと思うので」
「じゃあな黒子!」
「はい。また明日」

「黄瀬君」
「黒子っち…」
「どうも」
「名前で呼んで欲しいっス!!」


「………は?」

何言ってるんだこの駄犬は

「だから!!名前で呼んで欲しいっス!!」
「意味が分かりませんし、呼んだばかりじゃないですか」
もう一度繰り返す黄瀬に黒子は答えた

「名字じゃなくてっ!下!!涼太って呼んで!!」
「…はぁ」


何でそんなに必死なんだろうか。

「お願い!!!」

とりあえず理由を聞こうと口を開く。

「いきなりそんな名前で呼べなんて、何かあったんですか?」
「実は…」


―――この間モデルの仕事で外で撮ってた時なんスけど、
ちょうどカップルが通ってそのしてた会話聞いたら…

「あのね〜私の友達って彼氏に名前で呼ばれた事なくて、その事で喧嘩別れしたんだって〜」

俺と黒子っちもしてないな…

「へーじゃあ俺らは平気だなっ」
「名前呼びなんてつきあって1週間でしたし、ラブラブだもんね!!」

は?1週間!?
「名前じゃないなんて付き合ってないも同然だよな!!」

つまり俺と黒子っちは別れる!?
どどどどどどうしようヤバいヤバいヤバいヤバいせっかく恋人になったのに別れるとか嫌なんだけど!!
と、とにかく今度誠凜に行って呼んでもらわないと!!!―――



「…という次第デス」
「……バカなんですか君ああバカでしたよねすみません」

頭を思わず押さえる。

「俺にとっては真剣な事なんス!!」
でしょうね。
バスケやってる時と同じ顔してますよ。

「名前で呼ばないからって必ずしも僕達が別れるという訳じゃないでしょう?」
「…そう、だけど…」
「それとも君は別れたいんですか?」
「それは絶対にない」

本日何回目か分からない溜息をつく


「じゃあこの話はなしで」
「俺は納得してないっス」
「子供ですか。堂々巡りですよこれじゃ。」


なんでこの恋人はこうも頑固なのだろうか…

…そこも好きな自分は相当彼に染められている。
自覚しているからこそ譲れない事もある。
「分かりました。僕も理由を言います」

黄瀬が訝しげに黒子を見る

「…?」
「2年も名字で呼んでいるのに下の名前で呼ぶなんて、恥ずかしくてできません」
黄瀬の顔を正面にしながら、それでも真っ赤に染めている。


「っ!!」

つられて黄瀬も赤くなる


「…ごめん黒子っち。でもやっぱお願い。」
「だから別に別れるなんて
「うん。今はそういうのなしで呼んで欲しい」

真っ赤な顔を男子高校生同士でしているのはどうかしているのだが、
周りに誰もいないのだから仕方がない。



黒子は口を何度も開け閉めし、
そして…

「りょうた、くん」
「うん。テツヤもう1回」
「…っ涼太」

我慢できずに抱きしめる

公道で抱きしめてイグナイトかまされる?!
…と一瞬思ったが自分の背中にゆっくりと小さな手が触れるのを感じ、打ち消した。


「えへへありがと、黒子っち」
黄瀬から顔を背けるが耳まで赤い黒子に囁く。
「……もう絶対に呼びません」
「そんなっ!?」



暖かい腕の中で思った。

(黄瀬君には今度仕返ししないとですね)
 

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