*文芸部*

□天国組の出会いのお話
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僕は鬼だ。
鬼というのはとても微妙な生き物で、
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天国にいても地獄にいてもそんな事はどうでもいい。
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問題は『残る』か『消える』かなのだから――。
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僕の両親は地獄にいた。そこで僕を生んだ。
しかし、地獄にいた鬼喰いに食べられ、
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消えた。
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僕はひとりになった。
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毎日地獄の隅で、小さく縮こまっていた。怖かった。
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そんなとき、僕は閻魔大王に出会った。
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彼は地獄の隅で縮こまっている僕を見つけてくれた。
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「…そんな所で何してるの?」
いきなり声をかけられ、肩が跳ねる。
そして、彼を思い切り睨みつける。
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彼は片手にタモを持っていた。
「そんなにおびえないでよ 
オレは鬼喰いじゃぁ無いんだから。」
『じゃあ…なんでタモを持っているんですか?』
「これ?これは形のない亡霊を捕まえるためだよ。」
彼は僕の方へ近づいて来る。
「まだ小さいのに一人なんて…可哀想に」.
『…僕の事は放っておいて下さい。』
フイッと顔を逸らす。
しばらく沈黙が続く。
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「…ねーさー…君、暇…?」
『は?』
「いやー、オレ、君のこと、気に入った!」
『はぁ…』
「だから、オレの秘書になってくれない?」
『秘書…って…?』
「だからー…オレの世話とか、仕事の手伝いとか…
取りあえず、閻魔大王の秘書!」
『何で僕がそんな事…』
言おうとして、止める。
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この仕事を受けなかったら、僕はまた一人になってしまうのだろうか?
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彼は鬼の僕にこんなに優しく接してくれた。
僕の事を気に入ったと言ってくれた。
僕自身も、彼に興味があるのではないだろうか?
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「ちぇー やってくれないかー」
彼は口を尖らす。
『…あの…』
「ん?」
『やらせて…下さい』
「え?」
『やって…みたいです!』
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