【空へ】
□tragedy
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新宿御苑に着いた俺達は花見客の波をかき分けながら目当ての場所へ向かった。
広い芝生を囲うように桜が咲いているその場所でも空は充分広く見えたが、美絃さんが言うには、そういうのとは少し違うらしい。
園の最奥までいくとプラタナスの並木があった。
「ここっ」
「へ?」
「え?」
確かに並木の感じはフランスっぽくて綺麗だ。
でも空が広く見えるかと言われれば、今まで通ってきた場所のほうがずっと広く見える。
今イチしっくりきていない顔の俺と竜先輩の様子なんかお構いなしに彼女は「ここから見て」と道の端に俺達を誘導してしゃがみこんだ。
!!
「すげぇ」
「おー」
俺と竜先輩は同時に感激の声をあげた。
確かに立って見た時より、視界が木と空に限定されて圧倒的に空が広く高く感じる。
ここはヨーロッパの森か林で、人は俺達しか居ない。
そう錯覚できる。
「いいでしょ?」
「うん、いいな」
「さすが美絃さん!超いいっす」