【空へ】

□stay low
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よくリサーチせずに入ったけれど、どうやらうちの男バスは東京都で1位2位を常に争う強豪校だったらしい。


後から母ちゃんに聞いた話だと、保護者面談で俺にバスケ部に入るよう勧めれたみたいだ。

母ちゃんは俺が広い視野で物事を決められるよう、部活見学期間が終わってから伝えるつもりだったと言っていた。

今となれば全く関係ないことだが。



そんなこんなで、顧問の先生的に超期待の新人な俺は早い段階から先輩に混ざってシュート練をさせてもらえた。


聞えはいいが、同い年の1年やレギュラーメンバーギリギリの先輩達からはビミョーな視線をバシバシ感じる。


入部から1ヶ月経っても俺は部内に自分の居場所を確保できていない。



嫌みを言われて、おちゃらけて場を濁して、ちょっと和んで、でもまた嫌みな態度を取られて。
その繰り返し。



休憩時間に美絃さんの笑顔を見れなかったら、やってられなかっただろうと思う。





もうすぐ都大会の地区予選が始まる。


先輩達も余裕が無くなってきたのか、俺と張り合うように美絃さんに声を掛けていた竜先輩が彼女に近付かなくなった。









「そろそろアレだね。練習場所変えるね。」


予選1週間前、美絃さんが急にそんな事を呟いた。


「えっ」


俺は反射的に寂しそうな声をあげた。

彼女は少し驚いた顔をしたが、すぐに落ち着いた様子で

「予選大会、トウヤくんも頑張ってね。」

と、笑顔をくれた。



もう1ヶ月も見慣れたはずの笑顔だが、未だに心臓が跳ね上がる。




「あの、またここに戻りますか?」

「そうだね、全国大会が終わった頃、またお邪魔するね」

「え、あ、はい」



全国大会・・・って、




かなり先じゃん。





俺は急に不安に似た寂しさでいっぱいになった。
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